(『天然生活』2023年7月号掲載)
“心ときめくセンス”を片づけのなかに
東京から拠点を移し、2024年で16年目を迎える德田民子さんの安曇野暮らし。
洋服や大型家具など、多くの持ち物をすっきり手放して始めた新たな日々も「気づけばこんなに長くなって。そろそろもう一度、見直すタイミングにきているかもしれません」と話します。
とはいえ、德田家はいつ訪れても心ときめくような美しさ、愛らしさ。お部屋も庭も、「片づいている」だけではない、心ときめくふたりのセンスが生きています。
「安曇野への引っ越しを決めたとき、『リラックスできる住まいにしたいな』と思ったんです。周囲の自然と調和して、訪ねてくださるお客さまもふと、深呼吸したくなるような。そんな暮らしにぴったりと考えたのが、かごを中心にしたゆるやかな収納でした」
最初に選んだのは、目黒のショップで求めた大きなキャスター付きかご。
「ひとつではなく、2つ並べることで、リズムが生まれるでしょう。ほかにもいくつか、おそろいやサイズ違いのかごを取り入れてきました」
德田家のシンボルのような、オープン棚の「見せる収納」は、実は少しずつ変化を続けているのだとか。
「最近は、机の近くに置いた書類入れを見直しました。少し深めのかごに替えてみたらぴったり。前のかごは用途を替えて、別の場所で役立っています」
洋服のコーデのように、見た目のバランスを意識して
「片づけ」というと、近頃はすき間なくものを収める収納術も注目されますが「私はどう収めるかよりも、どう見せるかを大切にしたいほう」と德田さん。
「洋服をつくってきたせいか、見た目でサイズ感をつかむのは得意。かごを細かく測って探すようなことはしないですね。気に入ったらとりあえず買ってみると、不思議なほど『これにちょうどよかった』が見つかるものです」
夫の裕二さんも、ヴィンテージから100円ショップまで、お気に入りを見つける名人。
「たとえばぞうきんを吊るしておくピンチひとつでも、やっぱりいいと思えるものを使いたい。その点、夫は細かいツールもよいものを見つけてくるのが上手なんです」
場所ごとの片づけレイアウトは、洋服のコーディネートと同じ。
「テーマとなる素材と色をゆるやかに決めたら、『見た目』のバランスを意識してみる。ときには差し色や遊びの小物を入れたりして、楽しみながら『ものの居場所』を決めておくといいですね。雑然としがちな道具置き場さえ雰囲気よく見えたり、使ったあと元に戻すのも楽しくなると思うんです」
そして、最近一番の変化といえば、かごのカバーや暖簾のリニューアル。
「長く使っていたのですっかり見慣れていましたが、今回ガラリと取り替えてみたら、印象がまた大きく変わって。もう少し部屋を変えてみたくなりました。片づけも模様替えも、小さな変化は元気を与えてくれますね」
德田家の「片づけの工夫」
庭の手入れはこまめに
大掛かりな剪定はプロに任せながら、日々の手入れは裕二さん中心に。「今年は新たな試みとして、春一番に咲く福寿草を植えました。来年も咲いてくれるかしら」
〈撮影/林 紘輝 取材・文/玉木美企子〉
德田民子(とくだ・たみこ)
元『装苑』編集長、長野県安曇野市在住。スタイリッシュなファッションと、シンプルでセンスが光る暮らしの提案が人気。そのライフスタイルをたっぷり紹介した『德田民子さんの工夫のある家仕事』(扶桑社)も好評発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです