(『天然生活』2021年12月号掲載)
差し色と重ね着で曇天の冬を明るく温かく
「ここで暮らすようになってから、冬の気配に前よりも敏感に気づくようになりました」
東京郊外の街で生まれ育ったミスミノリコさんが、山形県鶴岡市に暮らして早3年。
「曇天、強い風、地吹雪。関東平野とはまるで違う『日本海側の冬』に身構えていた」ものの、いまはその厳しさのなかにある美しさや、冬の風物詩を楽しんでいると話します。
「庄内平野の稲刈りが終わり、出羽三山から紅葉が降りてくると、渡り鳥である白鳥の声が聞こえて気づけば冬。ここにはくっきりと季節が移ろう『潔さ』があります」
そんな鶴岡でのミスミさんの冬じたくは、まず身に着けるものから。ウールソックスを繕い、防寒着を準備して、ふいに訪れる寒さに備えます。「鶴岡に来て、さらに枚数が増えた」という大好きなストールたちは、自然と明るい色を選ぶ機会が増えたのだとか。
「以前、秋田に移住した友達が『外の色がシンプルだから、色ものが着たくなるんだよね』と話していて、たしかにそうだなって。色を失う季節には、明るい色を身近に置きたくなるんですね」
ストールを準備する
「一枚ふわっとまとうだけで、暖かさが断然違う」ストール。もともと好きだったところ、鶴岡に来てさらに枚数が増えたとか。
「コーディネートの差し色として、また冬に曇天が多い鶴岡で少しでも気持ちを明るくする意味でも、原色のものが増えました」
外出用の防寒着を出す
鶴岡市のある庄内地方は山形県のなかでも日本海側に面した風の強い地域としても有名。
「風を通さないアウターはもちろん、とびきり暖かいセーターやレッグウォーマー、手袋などを準備しておきます」
もちろん、ストールも忘れずに。
ウールソックスの繕いをする
仕事柄、たくさんの繕いをしているミスミさんでも「いざはこうとしたら穴があいていた」ということも。
本格的な冬になる前にクローゼットを見直して、必要に応じて繕います。
「夏にのんびりやるよりも、出番が迫っている秋のほうがはかどります」
<撮影/ミスミノリコ 取材・文/玉木美企子>
ミスミノリコ(みすみ・のりこ)
ディスプレイデザイナー、暮らしの装飾家。2019年に山形県鶴岡市に移住し、パートナーである物書き料理家・マツーラユタカさんとともにカフェ&セレクトショップ「manoma」を営む。日々を楽しくする小さな手しごとの提案も好評。近著に『お気に入りの衣服を繕う ダーニングキット付き』(角川SSCムック)。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです