(別冊天然生活『暮らしを育てる台所2』より)
どこよりも家が好き。パリの台所での新しい日々、新しい相棒
白とブルーグレーを基調にした自然光がやわらかく入るキッチンが、ミュージシャンで文筆家の猫沢エミさんのパリのキッチンです。
移住して半年が経ちますが日本からの荷物は未着(取材時)。コロナ禍にウクライナ情勢も加わり、到着のめどは立っていません。パリは家具・家電付き賃貸住宅も多く、装備は最小限で、少しずつそろえています。
「最初に買ったのは電気ケトル。朝食はコーヒーとパンとオレンジジュースが定番なので、初日は鍋で湯を沸かして、しのぎました」
鉄製のフライパン、チーズトレイとしても使えるまな板、パン切り包丁など、必需品を吟味して集めながら、彼が拾ってきた「ル・クルーゼ」の鍋も愛用しています。
「“ご自由にどうぞ”とばかりにいろいろなものが道端に置いてあるんです。『ボダム』のフレンチプレスやワインを拾ってきたこともあります」
鋼の包丁、燕三条製のキッチンばさみ、作家もののおろし器など、日本からの荷物の中には待ち遠しいキッチン道具が満載。とはいえ、いまの生活も楽しんでいる様子。
「いい山いもが手に入ったときは、すり鉢があればと思わなくもないですが、とろろじゃなく浅漬けをつくればいいと発想の転換で料理の幅も広がります。これがないとつくれないではなく、これしかないなかでどれだけのことができるか考えるのは面白いものですよ」
パリに来てからの猫沢さんの相棒
パン切り包丁
フランスで広く愛されている刃物メーカー「ノジャン」のパン切り包丁は、やわらかいパンもすっきりとよく切れる。
刃先に特徴がある白い柄のナイフはチーズ用、カフェオレ色の柄のナイフはバターナイフで、どちらもマルハナバチのマークが目印の「ライヨール」製。
サラダスピナー
東京でサラダをつくるときには根菜や果物をよく使っていたため持っていなかったサラダスピナー(野菜の水切り器)。パリでは葉野菜がおいしいので、導入したそう。
「場所をとりますし、マルチに使えない専用の道具はあまり好きではないのですが、これは特別。おいしいサラダをつくるのに、必要不可欠な道具です」
野菜かご
たっぷりの野菜を入れているのは「モノプリ」で手に入れたかごで、冷蔵庫の上が定位置。
「日本では野菜は冷蔵庫に入れていましたが、気温も湿度もさほど高くないパリではカットする前なら常温保存で大丈夫です。それに、フランスの野菜はおいしいので、マルシェで山盛り買ってきても、すぐに食べ切ってしまいます」
買い物用カート
「モノプリ」で購入したカートには、刺しゅう作家iinaomix作の亡き愛猫イオと猫沢さんのブローチを付けて。週に1度のマルシェや、近所のスーパーへ行くときに使っている。
おろし器と包丁
以前からフランスを旅する際には必ず持参していたセット。フランスにはチーズや柑橘の皮用のおろし器しかなく、包丁も切れないので必需品。
〈撮影/井上実香 取材・文/長谷川未緒〉
本記事は別冊天然生活『暮らしを育てる台所2』からの抜粋です
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猫沢エミ(ねこざわ・えみ)
ミュージシャン、文筆家、映画解説者、生活料理人。2002年に渡仏し、2007年より10年間、フランス文化に特化したフリーペーパー『BONZOUR JAPON』の編集長を務める。超実践型フランス語教室「にゃんフラ」主宰。2022年2月から猫2匹を連れ、二度目の渡仏、現在はパリに暮らす。著書は、一度目のパリ在住記を綴った『パリ季記』(扶桑社)のほか、『猫と生きる。』(扶桑社)や『ねこしき』(TAC出版)、『猫沢家の一族』(集英社)など多数。料理絵本シリーズの第三弾、『コンフィチュールづくりは子どもの遊びです』が2024年9月に発売。