(『天然生活』2021年2月号掲載)
「薬膳」からみる元気な冬の過ごし方 1
風邪対策の発酵食で、冬でも元気
冬の空気は乾燥しているため、風邪やインフルエンザのウイルスの活動が活発になります。
そこに疲労や睡眠不足、ストレスが重なると体の免疫力が低下してウイルスに感染しやすい状態に。
風邪をひかず、元気に過ごすためには体の免疫機能を維持することが大切です。
そこで頼りになるのが発酵食品。味噌、納豆、甘酒、たくあん、ヨーグルトなどの発酵食品で腸内の善玉菌を増やし、腸内環境を整えましょう。
栄養素の吸収もよくなり、元気はつらつに。
「薬膳」からみる元気な冬の過ごし方 2
冬の寄せ鍋は大正解
五味の調和を考え、何品もおかずを用意する献立は、もちろん理想です。けれども忙しい現代では無理なく続けられることが大事。
だから、冬にとくにおすすめしたい薬膳料理が「寄せ鍋」です。
旬の野菜と魚、豆腐などが集まった寄せ鍋は、ひとつの鍋の中に栄養素がそろった一品。ここに大根なますの小鉢を添えて「酸味」を足すと、さらにバランスがよくなります。
調理の手間がかからず、体が温まる鍋料理は頼れる味方。
毎日寄せ鍋を食べてもいいくらいです。
「薬膳」からみる元気な冬の過ごし方 3
献立に迷ったときは根菜煮に
冬の食卓にぜひ並べたいおかずが根菜の煮もの。
古くから食べられている定番の家庭料理ですが、豊富な栄養素を含み、薬膳そのものといえる大切な一品です。
材料は大根、にんじん、れんこん、こんにゃく、しいたけ、ごぼうなど。大豆を入れてもいいでしょう。
こんにゃくには水溶性の食物繊維があり、腸内をきれいにします。大豆と根菜類には血行促進や代謝向上の効果があり、寒さ対策にもなります。
彩りもきれいで、食卓を明るくしてくれますね。
「薬膳」からみる元気な冬の過ごし方 4
食事の量はほどほどが大事
和食の薬膳を学び、実践しようとするときに気をつけておきたいのは「食べすぎ」です。
五味のバランスをとることで、体は整っていくもの。ひとつの味に属する食品を多く食べすぎると、相剋にあたる部位に負担がかかります。
たとえば「甘味」の食べものをとりすぎると腎臓や膀胱の働きを悪くしてしまうのです。
また、食べすぎは体重増加をはじめとする不調にもつながります。
常に腹八分目を心がけ、五味(酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味)をバランスよく食べましょう。
「薬膳」からみる元気な冬の過ごし方 5
時間がないときは梅おむすびに
朝の食事には体温を上げ、体を目覚めさせる大切な役割があります。どんなに忙しくても、朝食は抜かずに食べたいですね。
簡単に五味をそろえることができるおすすめの朝食は、梅干しのおむすびとたくあん、緑茶の組み合わせ。
梅干しは「酸味」、塩は「鹹味」、たくあんは「辛味」、米は「甘味」に属します。
飲みものに緑茶を合わせることで「苦味」が加わり、五味調和に。
時間があれば、具だくさんの味噌汁を一緒に食べると、さらに栄養バランスが良好です。
「薬膳」からみる元気な冬の過ごし方 6
いい塩を選びましょう
食事づくりに欠かせない調味料のひとつに「塩」があります。
塩には食材の味を引き出す役割があり、塩がおいしければ料理がおいしくなるといわれるほどです。
薬膳では、自然物をとることが原則。調理にはぜひ、ミネラル豊富な自然海塩を使いましょう。
精製塩(いわゆる食卓塩)は塩化ナトリウムを多く含み、高血圧や心臓病のリスクを高めます。
自然塩にはカリウムやカルシウム、マグネシウムが含まれ、ミネラル成分のうま味で料理をおいしくします。
「薬膳」からみる元気な冬の過ごし方 7
ぐっすり眠るためにはカルシウムを
心がかりなことがあったり、不安な気持ちを抱えていると、眠るまでに時間がかかったり、睡眠が浅くすっきりと起きられなくなりがちですね。
そんなときは、心を落ち着かせる食べものを食べましょう。
骨まで食べられる小魚や、昆布などの海藻類、小松菜や水菜、豆腐や油揚げ、乳製品にはカルシウムが豊富で緊張をときます。
3回の食事で少しずつ食べるようにするといいですね。
寝る前のひと時、お気に入りの本を読んでリラックスするのもおすすめです。
〈取材・文/河合知子 イラスト/霜田あゆ美〉
武鈴子(たけ・りんこ)
東京薬膳研究所代表。成人病研究所に勤務後、中国・四川省で薬膳理論を学ぶ。東洋医学と日本の気候風土、伝統料理を融合した「和食薬膳」を提唱。著書も多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです