(『天然生活』2021年2月号掲載)
薬膳の基本「五味調和」とは?
まずは食材の分類「五味調和」から学んでいきましょう。
中国医学の原則のひとつに「五味五臓」があります。五味とは、酸味、苦味、甘味、辛味、塩味を指す鹹味(かんみ)のこと。
五味をバランスよく食べることで、体全体の調子がよくなります。逆に偏りがあると、不調の原因になるそうです。
「五味のバランスは、甘味が70%。他の4つは、7.5%程度が目安です」
「五味五臓表」について
この相関図は、食品を酸味・苦味・甘味・辛味・鹹味の5つに分け、体のどの部分に影響があるかを示しています。
時計まわりの矢印は隣り合う器官にも働きかけて助ける「相生(そうせい)」を、点線の矢印は働きを弱める「相剋(そうこく)」を表します。
また、五味には春夏秋冬と、季節と季節の間のあわいの季節である土用が対応。
内臓や器官名はその時季にその部位にトラブルが起きやすいことを表しています。
「酸味は苦味を、苦味は甘味を、と外側の矢印の順に働きを助けていくので“相生(そうせい)”と呼びます。そして内側の点線は、働きを弱める“相剋(そうこく)”。相剋の関係にある食材を組み合わせて食べることが、バランスをとる秘訣です」
自分の体質を知り、食材でケアを
五味の分類を覚えたら、次は体の中に入ってからの性質を示す「五性(ごせい)」を知りましょう。
食材は「寒・涼・平・温・熱」の5段階に分けられます。
文字通り「寒・涼」は体を冷やすもの。「温・熱」は体を温めるもの。
「平」は穏やかな性質の食品。米やじゃがいも、卵など日常的によく食べる食品は「平」に属しています。
「通常は五性のバランスをとった食事が望ましいのですが、手足が冷たく冬の冷えがつらい陰タイプの方は温・熱性の食物を、のぼせがちで汗っかきなど陽タイプの方は寒・涼性の食物を積極的にとることで調子がよくなりますよ」
食物の働きを温める、冷やすで分けるのは、東洋医学独特の考え方です。
五味の相剋関係にある食材と同様、陰陽の食物も同時にとることでバランスが整います。
「伝統的な和食には五性が整った料理が多いので、ぜひ見直して取り入れてくださいね。たとえば豆腐は水分が多く、体を冷やします。だから、冷や奴にはしょうがやねぎ、大葉など温める効果がある薬味が添えられているのです」
陽か陰か、体質チェック
薬膳の基本となる考え方である「陰陽」を知りましょう。自然界は陰と陽、相反するエネルギーで成り立っていると考えます。
自分の体質を知って、体を心地いいバランスに整えましょう
□ 温かいお茶や食べものが好き
□ どちらかというと寒がり
□ 冷たいものを多くとるとおなかをこわす
→「陰」タイプ
□ 生野菜のサラダや刺し身などが好き
□ 冷たい飲みものなどが好き
□ 季節に関係なくほてりやのぼせを感じやすい
→「陽」タイプ
陰と陽、体質別のおすすめ食材
体の中で陰・陽のバランスがとれているのが理想的な状態です。反対の性質の食物を取り入れて、日常的にケアを。
「陰」タイプにおすすめの食材
温・熱の食材は、さば、あじなどの青魚やにんじん、りんご、玉ねぎなど。みかんやきんかんなど冬が旬の柑橘類も体を温めます。
「陽」タイプにおすすめの食材
コーヒーやバナナなど熱帯地域原産の食材や夏に旬をむかえる野菜には、体を冷ます働きが。牛乳や白菜も寒・涼に属します。
ふだんから何気なく食べている定番の和食には、長い年月をかけて生み出されてきた先人の知恵が詰まっています。
旬の恵みをおいしく食べることを念頭に。和の薬膳は、きっと体を守ってくれます。
〈取材・文/河合知子 イラスト/霜田あゆ美〉
武鈴子(たけ・りんこ)
東京薬膳研究所代表。成人病研究所に勤務後、中国・四川省で薬膳理論を学ぶ。東洋医学と日本の気候風土、伝統料理を融合した「和食薬膳」を提唱。著書も多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです