(『天然生活』2023年1月号掲載)
山のきのこを採る楽しみ
輝夫さんには、日々の畑仕事のほかに、季節の楽しみがあります。
それが友人の中村さんや面白クラブのメンバーと自然の恵みを採りに行くイベントです。
なかでも、初夏の山菜採りと秋のきのこ狩りが大事な行事です。
木々が色づき始める10月、輝夫さんは群馬県の奥利根にきのこ狩りに出かけます。
定宿「照葉荘」に泊まって源泉掛け流しの温泉を楽しみ、翌日、きのこ狩りに臨むというスケジュールです。
きのこ狩りは、車で移動しながら行います。
採る場所は、これまでのデータも参考にしますが、きのこの生育はその年の気候や直近1週間の天気などに左右されるため、採れるかどうかは山の神様のご機嫌次第といったところ。
きのことの出合いを期待して森の中へ
名人でも難しいといわれるきのこ狩りですが、たくさん採れるかどうかは問題ではない、と輝夫さん。
きのことの出合いを求めて探しまわるワクワク感や、食用か否かにかかわらず、きのこを見つけたときのドキドキ感がたまらないのだといいます。
きのこ狩りの場所に到着すると、だれよりも早く、輝夫さんはかごを持ち、森の中の斜面を上へ下へと軽快な足取りで歩きまわります。
ならたけ、くりたけ、なめこ、ほていしめじ、はないぐちなどを求め、きのこが生育しやすい切り株や倒木の裏側などを探します。
そして、唐松林で見つけたのが、はないぐち。きのこに詳しい中村さんによると、「松葉の上にのせてホイル焼きにして、レモンじょうゆバターで食べると絶品」なのだそうです。
そのほか、白いきのこやさるのこしかけのような巨大きのことの出合いがありましたが、残念ながらどれも食用ではなかったよう。
でも、輝夫さんは「白いきのこがたくさん生えている場所を見つけたときはドキドキした!」と満足そう。
自宅用には「尾瀬市場」でまいたけやひらたけなどをたっぷり購入しました。
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〈撮影/山田耕司 構成・取材・文/野上郁子(オフィスhana)〉
坂井より子(さかい・よりこ)、坂井輝夫(さかい・てるお)
より子さん76歳、輝夫さん83歳。ふたりの出会いはより子さんが25歳のとき、勤務先だった横須賀の米軍基地で。現在、神奈川県葉山町に娘家族、息子家族とともに3世帯9人で暮らす。ふたりともに、日々の生活を楽しみ、人生を軽やかに生きている。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです