(『天然生活』2023年5月号掲載)
谷ヒュンスクさん(たに・ひゅんすく)
韓国出身。フランスでファッションを学んだのち、鞄ブランド「BOTTE」のデザイナーに。現在は「オルネ ド フォイユ」で布ものの企画を担当する。新居の玄関のたたきは、自身でタイルを貼ったのだそう。
チャイ
6歳のオス。茶トラらしくやさしく穏やかで、少々ぼんやりさん。カカオが残したごはんもしっかり食べ、6kgに増量中。いつもヒュンスクさんのあとを追いかける甘えん坊。
カカオ
6歳のオス。警戒心強めのキジトラ気質で「ずる賢いタイプ」。少食ゆえ4kg弱のスレンダー体形で女の子に間違われることも。手づくりのボールでサッカーをするのが好き。
猫と暮らす快適で心地よい住まい
海が見える鎌倉の家から都内へ、谷ヒュンスクさん一家が2匹の愛猫と住まいを移したのは1年半前のことです。日当たりのいい高台に念願だった家を建て、1階をスタジオ、2階を住居に。
インテリアショップ「オルネ ド フォイユ」の店主である夫の卓あきらさんとともに、自分たちがいいと思う選択をひとつずつ積み重ねて、細かい内装部分はみずから手を動かして、形にしていったといいます。
そんな谷邸を象徴するリビングダイニングは、5つの大きな窓から入る光が天井高3m超の空間全体にまわり、窓の向こうはアカシア、ユーカリ、ミモザなど、わさわさの庭木がそよぐグリーンビュー。
「大きな窓も高い天井も緑も、私たちが一番こだわったところ。とにかく明るくて気持ちのいい空間にしたかったのと猫たちに喜んでもらいたい、その両方からですね」
日なたぼっこと外を眺めるのが好きな猫にとって、ここはきっと天国。日差しのなかでまどろみ外を見つめて、2匹は日中のほとんどを窓際で過ごすそう。
そしてもちろん家族も、ポジティブな気が満ちる空間に自然と集まるのです。
ないものはつくって工夫して、猫との暮らしを豊かにする
モダンさと温かさが絶妙に混ざり合うインテリアのなかに、よくある既製の猫グッズは見当たりません。DIYが根づくパリで長く暮らした夫妻にとって「暮らしに合うものをつくる」のは日常。
座布団やおもちゃなどの布ものはヒュンスクさんがつくり、それ以外は「猫が日々どういう動きをしているか観察している」と話す卓さんが担当。
たとえば、自作の壁面シェルフにステップを4枚取り付けてキャットタワー代わりにしたり、猫が好む狭いスペースを設けたり。
オイルステインで深い茶色に仕上げたそのシェルフは空間にしっくりなじみ、使い心地も上々のようです。
「好みのタワーが見つからなくて棚にステップを付けたんです。2匹ともよく上り下りしていますよ。チャイはおやつがもらえないと、一番上のステップまでいってふて寝して。笑ってしまいます」
ふたりがずっと大切にしてきたDIYの心は、猫好きのスタッフたちと「こんなのあったらいいな」を商品化する「オルネコ部」の活動にもつながっています。
谷さん一家がカカオとチャイを迎えたのは6年前、彼らが生後約2カ月だったとき。16年連れ添った先代猫のケイトを亡くして家族が沈みきっていたころだったといいます。
「夫がたまたま募集を見つけて。2匹がきたら家じゅうが噓みたいにパーッと明るくなったのをよく覚えています」
「猫がいること」の大きさを、夫妻はこの家であらためて感じています。
「カカオとチャイの存在を以前より近くに感じられるようになったのがうれしい」と卓さん。ヒュンスクさんが続けます。
「窓際や棚の中など、心地よい場所をあちこち移動してくつろいでいるところを見ると幸せな気持ちに。家を建ててよかったなと思います」
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<撮影/清水奈緒 取材・文/熊坂麻美>
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです