(『天然生活』2023年1月号掲載)
一年の始めには英気を養う料理を
お重に詰めるおせちも、大皿の華やかな正月料理も、「時とともに変化を重ね、いまはおおよそ落ち着いてきました」と横山さん。
たとえば、鮮度のよい鯛を尾頭つきで蒸す「鯛蒸し」は、ぶり料理から転じたもの。
「かつては、年末といえば必ずぶりを一匹買い求めて、お刺し身にぶり大根に照り焼きにと、たっぷりいただいていたものです。けれど、いまやあまりにも高級魚になってしまって。あるときからぶりは切り身に、尾頭つきの魚は鯛に替え、炒り豆腐を詰めた『満腹鯛』にしてみたら、思いがけないおいしさ。すっかり定番となりました」
一年に一度、欠かさず繰り返してきたおせちづくりの時間は、横山さんにとって体調を知るバロメーターのような存在にも。
「年を重ねるほど、『今年もできた』とありがたさを感じます。そしてまた一年、健やかに過ごせるように。英気を養う節目として、これからも私なりに楽しめたらと思います」
横山タカ子さんのお正月の定番
鯛蒸しのつくり方
鯛の脂と、あっさり味の炒り豆腐が好相性。
詰めて蒸すだけで、食卓がパッと華やぎます。
材料(鯛1尾分)
● 鯛 | 1尾 |
● 木綿豆腐 | 150g |
● 長ねぎ | 1/3本 |
● パプリカ | 1/4個 |
● 薄口しょうゆ | 大さじ1 |
● 油 | 大さじ1 |
● かぼす(半分に切る) | 1個 |
つくり方
1 炒り豆腐をつくる。フライパンに油をひいて熱し、みじん切りにした長ねぎとパプリカを炒める。香りが出てきたら豆腐を加えてさらに炒め、仕上げに薄口しょうゆで調味する。
2 うろこと内臓を取り除いた鯛は、全体に塩(分量外)をまぶし、おなかに1をたっぷりと詰めたら、底にクッキングペーパーを敷いたせいろに入れる。
3 鍋に8分目まで水を入れて、湯を沸かす。沸騰したら2のせいろをのせてふたをし、15分ほど、鯛に火がとおるまで蒸してでき上がり。かぼすをしぼっていただく。
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〈料理・スタイリング/横山タカ子 撮影/山浦剛典 取材・文/玉木美企子〉
横山タカ子(よこやま・たかこ)
料理研究家。長野県大町市生まれ、長野市在住。長年、保存食を中心とした信州の食文化を研究すべく、各地に赴き取材を重ねる。食材の持ち味を生かした「適塩」の料理や保存食レシピが好評。近著に『横山タカ子さんの和のある暮らし』(扶桑社)。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです