• 次の誕生日で77歳になる、料理研究家の横山タカ子さん。新年の目標を訪ねると、「いまできている習慣を、これからも続けられたら」との答えが返ってきました。手仕事をしたり、日記を書いたり……横山さんの長年の習慣であり、新たな年も続けていきたいことを教えていただきました。
    (『別冊天然生活『横山タカ子さんの和のある暮らし』掲載)

    つつがなく時を重ねて、「いつも通り」に感謝を

    次の誕生日で77歳になる、横山タカ子さん。

    新年の目標は? と尋ねると少し考えて、「私くらいの年齢になると、『いまできている習慣を、これからも続けられたら』というのがささやかな目標であり、願いですね」との答えが返ってきました。

    なかでもいま、とくに意識したい習慣は「手仕事を日記のように続けること」だとか。

    「ここ最近は、コロナの反動の忙しさもあってか、大好きな縫い物があまりできなかったんです。でも、そうこうしているうちに、手が動かなくなるかもしれない。

    そんなときのためにも、つくりつづけてきた手縫いのふきんや、手染めして縫っている雑巾を、たくさんつくりためておきたくて」

    画像: 数年前に知って感激したという、つくろいの技法「ダーニング」。「気に入ったものを長く使いたい私にはぴったり」と横山さん

    数年前に知って感激したという、つくろいの技法「ダーニング」。「気に入ったものを長く使いたい私にはぴったり」と横山さん

    手縫いといっても、複雑な刺しゅうなどは行わず、並縫いの「運針」が基本。

    「それでも縫い目のひとつひとつには、その日の心模様が表れるようで、いとおしいもの。

    思い立ったらすぐ取り掛かれるよう、さらしやタオル、刺し子糸はたっぷり用意しています」

    画像: 台ふきなどに使うふきんは、さらしを切って「刺し子」の要領で気の向くままに運針を

    台ふきなどに使うふきんは、さらしを切って「刺し子」の要領で気の向くままに運針を

    また、日々を彩る家のしつらいも、「取り組むことそのものが元気の源」と横山さん。

    「手遊びというのかしら。素敵な草花や木の実などを見つけると『どうやって飾ろうか』とワクワクしてしまうの」と、笑顔で話します。

    新しい年を迎えるお正月の飾りは、健やかな1年への願いとともに、一層心を込めて。

    「『剪定したら分けてね』とほうぼうにお願いして集めた松葉や、庭で育ってくれていた苔、季節の木の実など、お金をかけなくても素材はたくさん。

    むしろ身近なもので工夫するほうが、喜びが増すようです」

    画像: お正月のしつらいは緑のなかに赤を添えて華やかに。「雑木の炭の黒も加えて引き締め、空気を清めます」

    お正月のしつらいは緑のなかに赤を添えて華やかに。「雑木の炭の黒も加えて引き締め、空気を清めます」

    そして、数々の撮影をこなし、レシピを提案する横山さんにとって、「メモ」をとる習慣もまた、心強い助けとなっています。

    「『何だったかしら?』と記憶があやふやなときも、ノートを見ればペンはうそをつきません。

    頂きものは日記に綴っておけば『そろそろお礼状を』と不義理も防げるし、メモ帳にはやるべきことを箇条書きにしておき、ひとつずつ消していくのも達成感となりますよ」

    ペースをくずさず、健康を維持して、何気ない日々の習慣をこれからも。

    「『いつも通り』への感謝を、忘れずにいたいですね」

    横山タカ子さんの、新年から始める小さな目標

    01 手仕事を日々、日記のように続けたい

    徐々に手が動かなくなるかもしれない、そんなときに備えて、今年とくに大切にしたいのが針仕事。「ふきんや雑巾をまとめて手縫いしておけば、日々の記録になり、『次の準備』にもつながります」

    02 好みに合った習慣で健康づくりを

    体力が衰えてくるからこそ、健康づくりはこれまで積み重ねてきた習慣の延長線上で。「無理をしないこと、自然に続けることをテーマに、私なりのエクササイズを見つけていきたいですね」

    03 めぐる暮らしのために、次の準備を

    季節を先取りしたしつらいで気持ちを盛り上げながら、家事や手仕事の準備を少しずつ整えて。「好きなことは、思い立ったらすぐ取り組める環境をつくって、いつまでも前向きでいたいものです」

    ささやかな目標をかなえるための近道アイテム

    「心も身体も健康であることがすべての基本」と話す横山さんに、健やかな日々を保つために欠かせない相棒を教えてもらいました。

    振り返りや確認に役立つ日記帳・メモ帳

    画像: メモ帳はリビング、日記は寝室が定位置。ナイトキャップにブランデーをたしなみながら書くことも

    メモ帳はリビング、日記は寝室が定位置。ナイトキャップにブランデーをたしなみながら書くことも

    「私、メモ魔なんです」と笑う横山さんにとって、20年以上続けている日記は過去を振り返り、未来に思いを馳せるための大切な習慣。日記帳には「10年日記」を何冊も使いつづけています。

    「1日分の欄はさほど大きくないから、その日にしたことや頂いたものなどをちょっと記録する程度。気持ちを深追いして書きすぎないためにもちょうどいいんです」

    メモ帳は、翌日の仕事の持ち物や献立などを箇条書きに。

    「仕事も家事も、段取り8割。つい忘れてしまうことも増えたから、書いて事前に確認します。終わったらひとつずつ消していくのも、達成感につながります」

    画像: 「ヨーガンレール」のカタログをメモ帳に。「これを捨てたらもったいない。余白を活用しています

    「ヨーガンレール」のカタログをメモ帳に。「これを捨てたらもったいない。余白を活用しています

    修理して履き続けるお気に入りの下駄

    画像: 青い鼻緒が目をひく下駄が、長年の相棒。「軽くて、足にもぴったりで。これで銀座にも出かけるのよ」

    青い鼻緒が目をひく下駄が、長年の相棒。「軽くて、足にもぴったりで。これで銀座にも出かけるのよ」

    「何かを成すには、まず健康から。健康は、まず足元から」そんな思いから、長年履き慣れた下駄を定期的にメンテナンス。

    「私は洋装のときにも履いてしまうほど下駄が好き。とくに松本で求めたこちらが一番のお気に入りなので、できるだけ長く履きつづけられるよう専門家に調整してもらいます」

    最近は修理ができる下駄屋さんが減ってきたため、今回は思い切って靴の修理店に持ち込んでみたのだとか。

    「断られるかしら、と思っていたら、若い店員さんが快く『やりますよ!』と言ってくれて、仕上がりも大満足でした。足元が快適だと、元気も意欲もわいてきますね

    画像: 靴底用のゴム素材を貼って、さらに丈夫に、歩きやすく。「うれしくてそのまま履いて帰ってきた」とか

    靴底用のゴム素材を貼って、さらに丈夫に、歩きやすく。「うれしくてそのまま履いて帰ってきた」とか


    〈撮影/山浦剛典 取材・文/玉木美企子〉

    ※ 本記事は『横山タカ子さんの和のある暮らし』(扶桑社)からの抜粋です

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    『横山タカ子さんの和のある暮らし』(横山タカ子・著/扶桑社)

    画像: 77歳、いまできている手仕事を“日記のように”続けたい。横山タカ子さんの「新年のささやかな目標」と暮らしのアイデア

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    信州に生まれ育ち、ずっと暮らしてきた料理研究家・横山タカ子さんの、四季の自然に寄り添った、小さいけれど奥深い暮らしをご紹介します。


    横山タカ子(よこやま・たかこ)
    長野県大町市生まれ、長野市在住。長年にわたり信州各地を訪ね歩き、郷土料理や行事食の取材を重ねる。野菜たっぷりのシンプル料理や、「さしす漬け」をはじめつくりやすい保存食のレシピが定評。「趣味は暮らし」と、四季のしつらいや和装、手仕事のセンスにもファンが多い。
    インスタグラム@takakoyokoyama_sasisu



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