(『天然生活』2021年2月号掲載)
暮らしにちょうどよい、町工場の生活雑貨
松野屋の店主・松野 弘さんに、「新年にそろえたい、日本のいいもの」を教えてもらいました。
今回、紹介いただいたものの多くが、いわゆる“町工場”でつくられているもの。
「昔から暮らしに根づいているものだから、使う方も気楽。‟作家もの”とは少し違う、名もないゆえの親しみやすさがありますよね」
暮れの大掃除に欠かせない小ぼうきやはたき、おせちづくりに活躍するかっぽう着。そして、暖房より不思議と暖かく感じる湯たんぽ。
とくにこの時季には、古くから親しまれる日本の道具に助けられることが多いと気づきます。
「うちで扱う道具の多くは、どこそこのだれそれさんの家というような家内制手工業によるもの。
普通に、我々と同じような生活をする人がつくっている確かさ、みたいな感覚がいいのかもしれませんね」
新年に向けて手を動かしながら、自然と思いは、その道具をつくった職人さんたちに向かいます。
この年の明け暮れを、だれもが穏やかに迎えられますように。
松野屋店主・松野 弘さんおすすめの、「日本のいいもの」
籐一本手買物かご角
昔はこんなかごを手に、商店街をまわってあれこれ買い物をしていたのだそう。「インドネシアの籐を、長野のご夫婦がひとつずつ編み上げているんです」
木製鬼おろし
この時季、鍋料理には欠かせない大根おろし。「鬼おろしですったおろしは、余計な水分が出ずにシャキシャキ。それを一度味わったら、手放せません」
ダチョウ羽ばたき
南アフリカから仕入れるダチョウの羽を池袋の家族経営の工場で昔と変わらぬ姿に仕上げる。「不織布の使い捨てはたきなどとは、佇まいが違います」
和小ぼうき
細かなちりは、手元の小ぼうきでささっと掃除。「栃木はほうきの生産が盛んな地域。松野屋用に糸の色を黒のみでシンプルに仕上げてもらっています」
トタン湯たんぽと湯たんぽカバー
トタンの湯たんぽの長所は、何といっても直火にかけられること。「カバーは耐久性と保温性の高いメルトン地。肌触りのよさも自慢のオリジナルです」
サワラおひつとヒノキしゃもじ
炊きたてをおひつに移せば、余分な湿気を吸い、冷めてもふっくらおいしいごはんに。「せっかくなら、しゃもじも木製を。抗菌性のあるヒノキがおすすめ」
真竹の椀かご
茨城県に住む80代の職人さんが、真竹を割くところからつくるかご。「底が少し上がっているから、洗った食器がすぐ乾く。根菜を入れても蒸れません」
ブタ毛チャンネルブラシ
しっかり硬い豚毛は、気持ちよく汚れを落とす。「静岡県のブラシ製作所の製品。工場などで使われるプロユースの品は、むだのないデザインで優秀」
春慶塗(しゅんけいぬり)の丸メンパ
つややかな春慶塗は、新年らしい華やかさいっぱい。「漆のお弁当箱は、日常使いにはもちろん、小さなお重のような感覚で使ってもいいですよね」
トタン米びつ
鉄板に亜鉛メッキを施したトタンの米びつは、耐久性抜群。「ネームホルダーを付けるアイデアで、収納ケースとしても受け入れられて人気の商品に」
石見焼すり鉢と山椒すりこぎ
「石見の土、そして石からつくる釉薬を使った、すり鉢専門の窯元の品です」。すりこぎは、鹿児島・霧島の山椒の木を使い、地元でつくったもの。
松野屋のかっぽう着
台所に立つ時間が長い年末年始は、服の汚れを気にせず作業できるかっぽう着が便利。「袖口のゴムが太く、腕まくりしても食い込まず痛くありません」
〈撮影/林 紘輝 スタイリング/竹内万貴 取材・文/福山雅美〉
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
谷中 松野屋
東京都荒川区西日暮里3-14-14
☎03-3823-7441
営業時間:11:00~19:00
㊡火曜日(祝日は営業)
https://matsunoya.jp/