(『天然生活』2024年2月号掲載)
支えるなかで見つけたことがいっぱい
家族のだれかしらを介護すること、延べ20年。「最初に倒れたのは義父でした」と、遠い日々を思い返す横尾光子さん。
人気カフェのオーナーや大人服「クロロ」のデザイナーとして活躍するまでは、子育てや家族のケアが中心の時代が長かったそうです。
「義父のがんがわかったときには、もう長くないといわれたんですが、治療を始めたらすごい元気になってね。10年ぐらいがんばってくれました。その間は入退院の繰り返しだから、私も手伝いに行ったりして。そのうちに、介護疲れだったのでしょうね、義母も倒れてしまい、一時期は同じ病院の3階と4階に義父と義母が同時に入院して、私は階段を行ったり来たりしていました」
それは横尾さんが30代から40代にかけてのこと。3人の子を育てながらの介護は、時間とのせめぎあいでした。
「移動の電車の中ではよく眠っていました」と笑う横尾さん。
それでも、病室に入る前にはモードを切り替えるために、にこっと笑顔をつくってから、扉を開けていたといいます。
人を支える
家族が一緒にいることを楽しむ
夫の勤め先は転勤が多かったけれど「家族でついていくと、決めていました」
赴任先になじもうとした夫が、会社の人を家の夕飯に招いたこともたびたび。
子育て中で大変だったが、いい思い出に。
介護中もカフェでひと息。そんな居場所がつくりたかった
最初の店は「女性がひとりでも入れること」をコンセプトにしていた。
「お支払いのとき『会社から直接家に帰るのが嫌で、ここに寄っているんです』という女の子がいて、ああ、お店を開いてよかったなと思いました」
喜ばれてわかった、自分の得意
義父の足をマッサージしてあげたら「気持ちいいなあ」と喜ばれ、アロママッサージや整体を習うことに。
「自分は人をいやすのが好きなんだ」と気づき、小さなサロンを開くことにつながった。
これからのこと
60代になり、横尾さんが大人服のブランド「クロロ」を始めたのは、歳とともに体形が変化し、好きだった服が着られなくなったのがきっかけ。
それならば自分でつくろうとスタートして10年。
最近、お客さまから「手術の後遺症で服の着替えが大変」と聞き、これからはユニバーサルデザインを目指す。
<撮影/近藤沙菜 構成・文/石川理恵>
横尾光子(よこお・みつこ)
1948年、兵庫県生まれ。銀行員、専業主婦、整体師などを経て、2005年より東京・吉祥寺に「お茶とお菓子 横尾」を11年間営んだ。2008年、ファッションブランド「クロロ」を立ち上げ、大人服を展開。2024年2月、同じく吉祥寺に「お茶とお菓子 横尾」を再オープン。インスタグラム@yokoomitsuko
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
* * *
第1章 これからの「おいしい生活」のつくり方
料理家・大庭英子さんには、いまの自分にちょうどいい、レシピ6品と台所仕事の工夫を、スタイリストのchizuさんには、気負わず楽しむ、テーブルコーディネートのコツを教えていただきました。
第2章 おしゃれは心のビタミン!
中野翠さんのエッセイと、ぬ衣さん、山下りかさんの春夏秋冬のコーディネートを紹介します。
第3章 豊かな人生のための幸せの支度
山本ふみこさん、ユキ・パリスさん、中島デコさん、松場登美さん、横尾光子さん、坂井より子さんの暮らしの流儀を紹介します。
第4章 心身とお金を整えるために
家で簡単にできる体操や、節約のこと。
第5章 人生の豊かな「しまい方」
石黒智子さんがはじめた終活と、井上由季子さんが経験した家族の介護について、お話を伺いました。