(『天然生活』2024年2月号掲載)
介護中でも自分らしさを大切に
「義父も義母もやさしい人でしたから、好きだったんです。それに、帰り際に私が『また明日来るね』っていうと、義父が『何時に来るんだ?』と聞いてくるんですよ。だからもう、明日のその時間には、私が来るって思いながら病院で暮らしているわけですよね。そう思うと、義姉と交代でなるべく毎日、顔を出していました。介護は大変だけれども、いつか終わりがある。私の人生は、そこで終わるわけじゃないですから」
パート勤めも辞めて、介護に専念していたころの横尾さんは、息抜きの術を心得ていました。
病院に行くときでも自分の好きな真っ黒の服でおしゃれすることを譲らず、病院帰りにはたとえ短時間でもカフェでお茶を飲み、家まで気持ちを引きずらないよう、切り替えていました。
また、時間をやりくりしてマッサージを習い、いつか仕事になるかもと、やりがいをもつことを大切にしていたとか。
「義父の足をマッサージしてあげたら、『気持ちいいなあ、うまいなあ』と褒められて、私に向いているのではとその気になっちゃったんです(笑)」
やがて義母が亡くなると、1週間後、あとを追うように義父も他界。
自分の時間を取り戻した横尾さんは、疲れているだれかをいやすことを続けたくて、小さなアパートを借りてマッサージサロンを開き、7年ほど運営しました。
私を支える
行き先が病院でもおしゃれをして出かける
大学生時代から「コム・デ・ギャルソン」の服が大好きだった横尾さんにとって、おしゃれは人生に欠かせないもの。
病院では少々浮いても、好きな服を着ることはやめなかった。
当時のバッグやスカートはいまも手元に。
好きなことは、習って追求
和菓子家の金塚晴子さんの本をきっかけに、金塚さんの教室に通って和菓子づくりを習った。
「いつか何かしたい」と追求するのは楽しく、心の支えにも。
この経験がカフェのメニューづくりにつながった。
70代でも誘われたらのってみる
「またいつかカフェをやりたい」と物件チェックをしていた横尾さん。
お店仲間の「hibi」さんから「隣で一緒にがんばりましょう」と誘われ、背中を押された。
仕事を続けることが人生の張り合いに。
<撮影/近藤沙菜 構成・文/石川理恵>
横尾光子(よこお・みつこ)
1948年、兵庫県生まれ。銀行員、専業主婦、整体師などを経て、2005年より東京・吉祥寺に「お茶とお菓子 横尾」を11年間営んだ。2008年、ファッションブランド「クロロ」を立ち上げ、大人服を展開。2024年2月、同じく吉祥寺に「お茶とお菓子 横尾」を再オープン。インスタグラム@yokoomitsuko
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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第1章 これからの「おいしい生活」のつくり方
料理家・大庭英子さんには、いまの自分にちょうどいい、レシピ6品と台所仕事の工夫を、スタイリストのchizuさんには、気負わず楽しむ、テーブルコーディネートのコツを教えていただきました。
第2章 おしゃれは心のビタミン!
中野翠さんのエッセイと、ぬ衣さん、山下りかさんの春夏秋冬のコーディネートを紹介します。
第3章 豊かな人生のための幸せの支度
山本ふみこさん、ユキ・パリスさん、中島デコさん、松場登美さん、横尾光子さん、坂井より子さんの暮らしの流儀を紹介します。
第4章 心身とお金を整えるために
家で簡単にできる体操や、節約のこと。
第5章 人生の豊かな「しまい方」
石黒智子さんがはじめた終活と、井上由季子さんが経験した家族の介護について、お話を伺いました。