(『天然生活』2020年1月号掲載)
食卓を彩る保存食たち
寒さ厳しい冬に備えて、昔から保存食づくりは大事な家仕事でした。2軒のお宅のバラエティ豊かな保存食を拝見します。
松井さんの保存食
こんにゃく農家で料理上手と評判の、松井ゆき子さんが自慢の保存食を振る舞ってくれました。
酢、黒糖、砂糖・塩など調味料を替えて漬けた梅干しやらっきょう、しょうがシロップに、しょうがの佃煮......。
ほどよくピタリと決まった味は、料理上手の証。それぞれのつくり方を尋ねる飯島さんに、松井さんは大まかな工程と調味料を伝え、「あとは“いい加減に”」と笑います。
地元の梅と松井さんのお父さんが育てたらっきょうを多彩な味に。
飯島さんのお気に入りは、まんなか右の梅のさしす漬け。
しょうがシロップをつくったしょうがを、しょうゆ、砂糖、みりんで煮て、最後におかかをまぶした佃煮。辛味が効いた大人の味。
かぼちゃやビーツ、紫大根など多くの野菜を育てる松井さん。自宅で「農家民宿」を営み、宿泊客はこんにゃくづくりも体験できる。
リビングの一角に保存食のびんがずらりと並ぶ。
ブランデー、ジン、ウイスキーで仕込んだ3種類の梅酒の飲み頃を待っているそう。
新しょうがのシロップ(左)と、ヒネしょうがのシロップ。
「新しょうがのほうがスッキリしています。紅茶に入れて飲むとぽかぽかに」
色がきれいな紫大根の甘酢漬けは箸休めにぴったり。
「薄く切って塩もみしたあと、甘酢に漬けるだけ。『かんたん酢』を使っても」
飯塚さんの保存食
ギャラリーショップの店主、飯塚和子さんは、4年前に夫の故郷である高山村に前橋から移住しました。
台所には、梅干しや味噌、ジャムやピクルスなど、いくつものびんが。
農家さんたちから野菜や果物を食べきれないほどもらうため、娘の咲季さんとせっせと保存食にしているのです。地元の定番という高山きゅうりの佃煮をつくり、近所の人と交換することもあるとか。
「素材は同じでも家によって味は違うから面白いですね。農家さんから食べ方を聞いて、新しい味を知るのも楽しみです」
クラフト作家の作品を中心に扱う「カエルトープ」を営む飯塚さん。
併設のカフェやギャラリーではイベントも行っている。
左は梅農家さん直伝の塩分10%の梅干し。無農薬で新鮮な梅を洗わずに漬けるのがコツだそう。
右はキウイジャムとトマトソース。
左から、高山きゅうりのピクルス、ドライトマトのオイル漬け、鞍掛豆の酢漬け、山ごぼうのしょうゆ漬け。
ごはんのお供やおつまみに。
咲季さんが育てた自家製大豆の味噌。
糀は福岡のミツル醤油醸造元のものを使用。
「九州産の糀だからか、甘めに仕上がりました」
<撮影/有賀 傑 取材・文/熊坂麻美>
飯島奈美(いいじま・なみ)
東京都八王子生まれ。フードスタイリストとして数々のテレビCM、映画、テレビドラマに関わり、記憶に残る「食」を表現。オリジナルレシピ付きのエッセイ集『ご飯の島の美味しい話』(幻冬舎)など著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです