• 軽井沢の里山に抱かれて建つ「ほっちのロッヂ」は、名前のとおり山小屋のような佇まい。病院でも高齢者施設でもない、「診療所と大きな台所があるところ」とは? 診療室のすぐそばから聞こえてくるのは、ごはんをつくっている音。医療と暮らしが地続きになった、新しいケアのかたちがここにあります。
    (『天然生活』2022年11月号掲載)

    “健康とはプロセス”というポジティヴ・ヘルスの考え方

    「健康」ってなんでしょう。

    人間ドックで満点をとって、五体満足でいることだけが、「健康」なのでしょうか。

    たとえ片足をひきずっていても、どう工夫すれば自分の生活が充実するか、だれに相談すればいいかがわかっていて、自分のやりたいことを見つけていく人は健康的ではないか。

    画像: 2階にある診療室。知り合いの家でお茶を飲むような雰囲気で話ができそう

    2階にある診療室。知り合いの家でお茶を飲むような雰囲気で話ができそう

    “がんになってよかった、この病気になったことで自分がやるべきこと、家族のことを考えられたから”という人に会うと、医者としては拒否反応を起こします。医学ではがんは悪であり、撲滅すべきものと教えられてきたから。けれど、そういう人も確かにいる。在宅医療で患者さんの家に行くと、その人の文脈のなかに僕らが入っていくので、癌になって幸せとか、ALSで首から下が動かないけれど、好きなことができている人に出会う。WHOの定義でいうと不健康なのに、こうした人たちが健康的に見える自分はどうなっているんだと悩んだこともありました」

    そんな紅谷さんと「ほっちのロッヂ」では、健康とは「状態」ではなく、なにかに向かっていく姿勢であり、プロセスであると考えることにしました。

    大事なのは、動いて、進んでいくエネルギー。オランダのヒューバー医師によって提唱された「ポジティヴ・ヘルス」という概念に基づいています。

    実践しているのは、医者の前に座ると健康かどうか自動的に決められる“与えられた健康”ではなくて、健康かどうかを自分で決め、つきあっていくというやり方。

    画像: 「アジア太平洋地域高齢者ケア・イノベーションアワード2022」のSocial engagement program部門にて最優秀賞を受賞

    「アジア太平洋地域高齢者ケア・イノベーションアワード2022」のSocial engagement program部門にて最優秀賞を受賞

    たとえば頭痛は、外からやってくる敵ではなく、それも自分の一部。原因はなにか、疲れなのか、緊張なのか、どうやったらうまくつきあえるかを考えていきます。

    「ほっちのロッヂ」が面白いのは、健康、身体、病気とのつきあい方を改めるだけでなく、頭が痛いと感じるのも、おなかがすくのも「すべてがあなた」という考えを実践していること。

    「それを両立できる環境を整えたいと思っているんです」と藤岡さん。

    だからこそ、「診療所と大きな台所があるところ」となっているのです。

    画像: 病院でも高齢者施設でもない“新しいケア”のかたち。軽井沢の小さな診療所「ほっちのロッヂ」を訪ねて

    ほっちのロッヂ

    長野県軽井沢町発地1274-113
    https://hotch-l.com/



    <撮影/在本彌生 取材・文/岡田カーヤ>

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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