(『天然生活』2020年3月号掲載)
グラデーション糸で物語のある刺しゅうを
「どこでも手芸」をモットーに、旅先や日常のあらゆるシーンで、刺しゅうを楽しむ洋輔さん。
動物や植物をモチーフにしたカラフルな刺しゅうは、絵本のワンシーンを切り取ったような世界観に想像が膨らみます。
「目立たなくする繕いにとらわれると神経質な作業になりがちですが、刺しゅうでカバーすると、デザインとして取り入れられて、自分らしさもプラスできます」
そう話す洋輔さんの繕いは、25番よりも太い5番の刺しゅう糸を使ってステッチするというシンプルなもの。
その際、グラデーションの糸を使うと、高度な技術がなくてもカラフルで表情のあるデザインに仕上げられるのが魅力です。
大きな穴やシミ隠しには、刺しゅうワッペンを縫い付けてワンポイントにするのも洋輔さん流。
「ワッペンは25番の刺しゅう糸で縫っています。甘くない動物モチーフは男性でも着こなしやすく、ストーリー性のあるデザインが浮かんでくるので、縫っている時間も楽しいんです」
自分の手を動かして繕ったものには、気持ちを込められるのが一番の魅力という洋輔さん。
とくに刺しゅうは、相手の好きなモチーフや色を取り入れることができて、いっそう愛着がわくアイテムに生まれ変わりそうです。
大きな補修にはワッペンを活用

ポケットがちぎれて、生地に穴があいてしまった......。
そんな大きな補修には、ワッペンを活用すると便利。
穴のあいた部分にはハチの刺しゅうを施し、「はちみつ交渉中のクマ」という物語をプラスするのが洋輔さん流。
飾りステッチで補修プラス補強を

Tシャツの虫食いとポケットの補修は「ハエを狙うカメレオン」がテーマ。
物語を持たせることで広範囲を自然に繕えて、生地の補強としても効果的。
シャツの衿の擦り切れには存在感のある刺しゅうを。
飾りステッチを入れて補強。
塗り絵感覚で線画にステッチ

ステッチの練習にもなる線画のTシャツ。
塗り絵感覚で線画に沿ってステッチをすれば生地の補強になり、線画を残す部分があっても違和感がないのが魅力。
グラデーションの糸を使うと一針ごとに色が変わって、デザイン性も高まる。
チェーンステッチでポケットを補強

ハードに使う作業着は、ダメージを受けそうな部分をあらかじめ補強。
擦り切れやすい脇ポケット口や胸ポケットはチェーンステッチで補強しつつ、デザイン性もプラス。
かぎ裂きなど大きな穴の補修にはワッペンを活用して。
ストールの穴を刺しゅうでカバー

ストールやニットにできた虫食いなどの穴は広がりやすく、放置すると取り返しのつかない傷になってしまうことも。
穴よりひとまわり大きい動物を刺しゅうして穴をふさげば、ほつれを食い止められて、デザインとしても楽しめる。
繕いの相棒

刺しゅう糸は5番のグラデーション糸を愛用。
よく使う10色前後を、フランスで買ったスーツケース型のソーイングボックスに常備している。
針ケースは、刺し子キットのコースターをアレンジしてつくったオリジナル。

針と糸があれば、ひざを支えにどこでも刺しゅうできるのが洋輔さんの特技。
<撮影/滝沢育絵 取材・文/田辺千菊(Choki!)>
洋輔(ようすけ)
2010年に刺しゅうと服飾を学ぶため渡仏。2015年に帰国し、手芸家として活動。NHK「すてきにハンドメイド」の司会を務める。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです