地球がつくりだす、美しき鉱物の世界
新連載「美しき鉱物の世界」が始まります。天然生活編集部の鉱物好きなふたりが、毎月、自慢のコレクションを持ち寄り紹介します。
第1回目の今回は、「ガネーシュヒマール産ヒマラヤ水晶」とザクロ石(ガーネット)の一種、「スペサルティンガーネット」です。

左)「ガネーシュヒマール産ヒマラヤ水晶」、右)「スぺサルティンガーネット」
川添 天然生活編集部に、実は鉱物好きな人がふたりいることがわかりまして、この企画が始まることになりました。鉱物の魅力って、あまりご存じない方も多いですが、菅沼さんはどんなところに魅力を感じていますか?
菅沼 自然のつくり出す造形美ですかね。さまざまな色や形があって、どれもみな美しいです。
川添 確かにそうですね。「自然界に直線はない」というような言葉を聞いたことがありますが、結晶構造を見ているとこんな直線的な幾何学模様や形状が自然に生まれるというのが面白くて惹かれます。
ヒマラヤの高山で採掘される‟ロマンの塊”「ガネーシュヒマール産ヒマラヤ水晶」




川添 では、まずは菅沼さんのとっておきをお願いします。
菅沼 はい。私が今日持ってきたのは、ヒマラヤ水晶です。水晶は世界各地で採れますが、これはネパールのガネーシュヒマール産。6,000~7,000m級のヒマラヤの山々で採掘される、とても希少な水晶です。
川添 これは大きいですね。水晶というと無色透明なイメージですけれど、これは苔みたいなものが付着しているように見えますが。
菅沼 苔っぽく見えるのも実は石なんです。クローライト(緑泥石)といって、この石が付着しているのが「ガネーシュヒマール産ヒマラヤ水晶」の特徴です。
川添 そうなんですね。クローライトが付いていない部分を見ると、透明感が際立っていますね。

「ガネーシュヒマール産ヒマラヤ水晶」。クローライト(緑泥石)が付着していない部分は透き通っている
菅沼 写真で見ると目で見ているのとは違った印象なのも面白いですね。水晶の面にできているバーコードのような筋が、結晶が成長した跡になります。水晶は1mm成長するのに100年かかるともいわれているようです。

表面のバーコードのような筋は、長い年月をかけて水晶が成長した証
川添 ロマンがありますね。この石とはどのように出合ったのですか?
菅沼 15年以上前になりますが、当時原宿にあった石屋さんで買いました。「すごい石がある」とお店の方に見せてもらって、石の存在感に圧倒されたのを覚えています。
川添 私に鉱物の楽しみを紹介してくれたヨガの先生が、ヒマラヤの水晶はパワーがあって、コーヒーにかざすと味が変わるとおっしゃっていたのですが、本当に味は変わるんでしょうか?
菅沼 う~ん、どうでしょう? ここにコーヒーがあるのでかざしてみましょうか。(笑)
川添 ヨガの先生は先っぽをコーヒーに向けていた気がしますが……。
菅沼 こんな感じですかね? 何かを振りかけているみたいに見えるかもしれませんね。

ヒマラヤ水晶をかざすと、コーヒーのが味がよくなるという話だが……
川添 味は変わりましたか?
菅沼 ……分かりません……。でも、標高6,000m以上の過酷な環境の山に登り、鉱物を発掘するって相当大変なことだと思うんです。そのストーリー自体に特別感がありますよね。
水晶も、ヒマラヤ山脈のような鋭い形状や、光にかざしたときの透明感がまた美しくて、なんともいえない味わい深さがあるんですよね。
<撮影/山川修一 参考文献/『楽しい鉱物図鑑』(堀 秀道・著、思草者・刊)>