トラブルで予定変更、そんな時にどう考える?
「○○よりまだマシ」
そんなふうに考えたことはありませんか?
私は実は、このくせがすごくありました。
たとえば、今日。
前日の到着に合わせて、通販で買ったトビウオのすり身を使っておでんを作ろうと、昨日から準備していたんです。ところが配送元が屋久島であったため、船便の欠航で到着が1週間後になることに!
ショックでした。なんだかせっかくの計画がだめになったような気がして。
私がめげない理由。それは猫がいてくれるから
それでも、私はめげません。すぐさま予定を変更し、ハンバーグを作りはじめました。
さあ、あと少しで焼き上がり。ごはんをよそおうと炊飯ジャーを開けると……ほとんどない。がっかり。
慌ててお米を研ぎはじめたら水が顔に飛び散るし、服は濡れるし、散々な日。
そんなときに思うのです。
「こんなの全然マシ。だって、猫がみんな生きて、元気でいてくれているんだもの」

この考え方って、私はとてもいいと思っていたんです。
そのひとつで、怒りややりきれなさに折り合いをつけ、人に当たったり、自分を責めたりせずにすむ、と。
だけど、目の前のつらさから逃げているだけかも? 猫から教わる「がまんしない」生き方
ところが、実はそうすることで良くない効果も生んでしまっていたのです。
それは……
「何かと比較することで、『今あるつらさ』を無視してしまい、自分の心をないがしろにしてしまうこと」。
たしかに、私は今回のことで、ショックだったし、悲しかったし、つらかった。
なのに無理にがまんして、大丈夫!と自分の本音にふたをしてしまっていたのですね。
猫たちは、「今」のことしか考えません。

たとえば、かつて苦しい野良生活を体験したとしても、そのことを引き合いに出し、現在の苦痛や不満を押し殺したりしません。
お腹は減れば伝えてくれるし、体が痛くてもSOSを出してくれます。
もし、猫が「昔よりはマシだから」と何もかもがまんしていたらどうでしょう。
その子を愛する家族として、そんな無理をさせたくないし、今のしあわせを存分に求めてほしいと思うはずです。
私たち人間も同じ。
大人になるほど、聞き分けが良くなり、人に迷惑をかけなくなり、そして、自分を抑え込みます。
ときには猫のように、本当の自分の痛みにも耳をすまし、それを抱きしめてあげるのも、しあわせに過ごす秘訣なのではないかと思います。


咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」