その前に、「スぺサルティンガーネット」をもう一度……
▼「美しき鉱物の世界」第一話はこちら
川添 天然生活webの新連載「美しき鉱物の世界」が無事、第2回を迎えることができました。
川添・菅沼 パチパチパチパチ……(拍手)。
菅沼 正直なところ「誰も見てくれなのでは?」と心配していたのですが、予想をはるかに上回る多くの方々に読んでいただきまして、本当にありがとうございました!
川添 本当に感謝しかありません。
菅沼 第1回目の反響が想定外すぎて、「天然生活web」編集部内では「事件」ともいわれました。
川添 そういわれると複雑な気分ですが、まずはお知らせです。
菅沼 なんですか?
川添 実は、第1回目で紹介させていただいた「スぺサルティンガーネット」ですが、うっかり、カメラマンさんに一番よい角度をお伝えするのを忘れていまして……、今回改めてといいますか、ついでにカメラマンの山田さんに撮影してもらいましたので、ここに謹んで掲載させていただきます。

第1回で紹介した「スペサルティンガーネット」の雄姿をご覧ください
菅沼 改めて見ると、結晶がすごいですね。でも……第1回目の写真とどこが違うんでしょうか?
川添 この角度から見ると、結晶の周囲が育って中央が凹む、骸晶(がいしょう)と呼ばれる構造が見えて、結晶構造がより複雑に見えるのがカッコいいかなーと。
菅沼 なるほど、めちゃくちゃかっこいいですね! 光が透けている感じもとてもきれいです。
川添 山田さんありがとうございます!
山田 ……。
宇宙から見たジャングルの景色を思わせる「クリソコラ」

左)「ルチルクォーツ」、右)「クリソコラ」
菅沼 それでは「美しき鉱物の世界」第2回を始めていきたいと思います。今回ご紹介する鉱物は「ルチルクォーツ」と「クリソコラ」です。
川添 では、まず菅沼さんの石からお願いします。
菅沼 はい。私が持ってきたのは「クリソコラ」です。
川添 原石と磨いてある石のふたつを持ってきてくれたんですね。

クリソコラ。左が原石で右が磨いたもの
菅沼 はい。研磨された方は、石の模様がより際立って見えますよね。
川添 きれいですね。まるで宇宙から見た地上のジャングルを流れる川のようにも見えて、見入ってしまいます。
菅沼 確かに衛星写真感ありますね!
クリソコラは「珪孔雀石(けいくじゃくいし)」といわれますが、似たような名前で「マラカイト(孔雀石:くじゃくいし)」という別の石があります。
どちらも銅を含む鉱物ですが、クリソコラは珪塩酸でできているので珪孔雀石と呼ばれるそうです。
川添 どちらも緑青(ろくしょう)っぽい色ですから、銅由来といわれると納得です。





菅沼 このふたつが合体した「クリソコラマラカイト」という石もあるそうです。
川添 そうなんですか。
菅沼 いま気が付いたのですが、研磨した石の方、ひびが入っていますね……。欠けている部分も。
実は、クリソコラの硬度(物質の硬さを表すモース硬度のこと。ダイヤモンドを最高の硬度10とする)はとても低く、2.5~3.5くらいしかないそうです。
川添 ちょっと持ち歩くのが心配になりますね。


菅沼 昔、友人がマラカイトを見せてくれたことがあって、私の手のひらの上に置いたんですね。そうしたら突然パリンッと割れたんです。
川添 ええぇ!?
菅沼 なんだか悪いことをしてしまったなというのが、記憶に残っています。
川添 そんな簡単に割れちゃうものなんですか!?
菅沼 なんでしょうね。ちょっと不思議な力がはたらいたのか……、よくわからないのですけど、もしかしたら内部に亀裂が入っていたのかもしれませんね。

撮影時には、不思議な力がはたらかなくてよかったです
川添 なるほど、これはどこで手に入れたのでしょうか?
菅沼 どちらも旅先のペルーで買いました。旅の出合いということで。
川添 へぇ~、そういう石の買い方もいいですね。
菅沼 クリソコラには、長い年月をかけて水晶と合体したものもあるらしいんですよ。
川添 クリソコラとマラカイトが合体した「クリソコラマラカイト」のように、色がまだらになっている感じですか?
菅沼 いえ、完全に融合して、水晶のような透明感のある緑色のきれいな石になっていて、「ジェムシリカ」と呼ばれているんですよ。
川添 ジェムシリカですか……、いま検索してみたんですけど、まさに宝石という感じのきれいな石ですね! こういう風に完全に混じり合うってこともあるんですね。
菅沼 不思議ですよね。それぞれの石も美しいですが、融合することでまた別の美しい石になる。ロマンですね。
川添 今日、クリソコラを見せてもらって、自分は普段、結晶構造がハッキリした鉱物ばかり見ていて、こういう石っぽいものをあまり見ていなかったとこに気づかされました。こういう石も、魅力的ですね。
<撮影/山田耕司 アシスタント/石井 遥、中山 雅 参考文献/『楽しい鉱物図鑑』(堀 秀道・著、思草者・刊)>