(『天然生活』2020年6月号掲載)
がんばりすぎないで、“とりあえず”があっていい
片づけや整理整頓は、こんなふうに、俯瞰で考えることが大事だと青木さんはいいます。
「たとえば引き出しの中身がすぐにぐちゃぐちゃになってしまうとしたら必ず何か原因があるはずです。出し入れがしにくくて戻しづらいとか、その収納場所に合っていないなど。ものの場所は基本的に使う場所にあるのが前提なので、行動パターンや生活習慣から導き出してみるのもいいと思います。できない自分や続かないことを責めるのではなく、どうしてか? と真剣に考えると、よい方法がきっと見えてきます」
青木さんの“ゆるやかに”やる片づけ。そのルールはほかにもありました。
「ものの量については、あれもこれも減らす必要はないですよ。限度はあるけれど、“とりあえず”があっていいのでは」
使っていないのにどうしても捨てられないものは、“とりあえず”半分にしてみる。もしくは、保留箱やスペースをつくって“とりあえず”そこに入れてみる。
やっぱり必要ならまた収納方法を考えればいいし、なくても意外と大丈夫と思えたなら処分すればいい。
「ゆっくりでいいと思います。階段を1段ずつ上るように、少しずつ上達していくはずですよ」
ゆったりとした口調で語ってくれる青木さん。
その言葉を聞いていると、自分にもできそうだな、やってみたいなと、片づけたい欲がむくむくと膨らみます。
「ちなみに、私が最初に片づけをおすすめする場所は下駄箱か洗面所です。そこまでスペースが広くないし、クローゼットやキッチンほど思い入れが強かったり複雑だったりする場所ではないから、要・不要が決められていいですよ」
できた自分を最大限に褒めるのがポイントです。
そういって笑う青木さん。春の訪れとともに、暮らしを整えてみませんか。
青木さんの整えルール
透明のファスナー付き袋は整理整頓の強い味方

実家に帰るときや旅行に行くとき、すぐに取り出せる。特定のしまい場所があれば、もらったらすぐ、必ずここに入れるという習慣もつく
化粧品のサンプル。なんとなくあちこちに置いたまま......になっていませんか?
種類で分けて小さな保存袋に入れておけば、使いたいときに使いたいものをサッと取り出せます。青木さんはほかに、金具やケーブル類なども同様に保存袋に収納しています。
「中身が見えることって実はすごく重要なのです。細かなものこそ、中が見える透明なものにしまってください。サイズ違いでいくつかストックしておくと便利ですよ」
青木さんの整えルール
収納グッズは四角くて倒れないものを選ぶ

日頃から不要な紙袋をもらわないことも徹底している。右のボックスには、宅配便に使うエアパッキンとパッキン用の紙類を入れて
青木さんのお宅では、紙袋のストックは大小でサイズを分けて半透明のボックスへ収納しています。
「以前は大きめの紙袋にガサッと入れていたのですが、その袋自体が倒れて、そこから秩序が乱れるということがよく起きていました」
青木さんいわく、収納する箱・入れものは四角くて倒れない、安定感のあるものが圧倒的によいそう。
「私の場合は、ホコリが付きにくくサッとふけることも重要。そのため、我が家には収納のためのかご類はありません」
青木さんの整えルール
よく使うものこそ特等席にしまう

メジャーを最も取りやすい場所に。出し入れで周囲のものが崩れてこないことも重要
家をつくるときに重宝した本格的なメジャーは、現在も頻繁に使っています。
「このメジャー、以前は引き出しの中に立ててしまっていたのです。でも、戻すときにひもの部分が邪魔になることが多くて引き出しがスッとしまらず、そのたびに小さなストレスを感じていました」
それならばと、寝かせてしまえるようにスペースを確保しました。
「ちょっとしたことですが、贅沢な指定席は戻すたびに快感です」
<撮影/砂原 文 構成・文/結城 歩>
青木美詠子(あおき・みえこ)
文筆家。冷えとりに関する著書のほか、日々を綴ったエッセイ、家づくりに関するブログにもファンが多い。昨年、整理収納アドバイザーの資格を取得。現在は片づけの訪問レッスン、自宅セミナーなども開催している。http://www.aokimi.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです