(『天然生活』2020年9月号掲載)
手間を楽しむ心を大切に夫婦が阿吽の呼吸でつくる台所
山口を拠点に出張喫茶などの活動で知られる、「カピン珈琲」の亀谷靖之さん・千晴さんご夫婦。
2011年より築50年の日本家屋を改装して住み始め、翌年には敷地内に茶室を思わせる、小さな珈琲の販売所もオープンしました。
夫妻の台所でひときわ目をひくのは、庭の木々が絵のように見える一枚ガラスの大きな窓。

庭を望む一枚ガラスの窓と、モルタルの壁が凛とした空気感。モルタルは少しムラが残る状態が気に入り、仕上げ直前で止めている
「その日のお天気や季節のうつろいを感じながらお料理ができますし、庭仕事をする夫に『ごはんできたよ!』と合図を送るなど、お互いの存在をいつも感じられるのがいいんです」と千晴さん。

ランチは横並びに座って。きゅうりの豚しゃぶ、トマトの白あえなど、畑の野菜を生かした献立が多い
夫婦の暮らしの句読点となっているのは、やはりコーヒー。来客も多いため、よく使うコーヒー道具はまとめて窓辺に並べています。
朝は長年、千晴さんが淹れていましたが、妊娠が判明してからは靖之さんが自分用に淹れ、千晴さんはルイボスティーなどのノンカフェインを飲むように。
「なんだかんだで夫が淹れるコーヒーの方がおいしいんです。出張喫茶で淹れるのは必ず夫。私だとトロリとした口当たりにならなくて。少し急いだりすると、不思議なことに味に出てしまうんです」

「コーヒーは手間を楽しむもの」という靖之さん。アンティークの手動ミルで豆を挽き、時間をかけてドリップする
キッチン下のワゴンを新たにつくるなど、住み始めてから少しずつ改良を重ねてきた台所。
夫婦と愛犬ドリィで穏やかに過ごしてきた空間に、今後は新しい家族の愛らしい笑い声も加わり、コーヒーの香りとともに幸せな時を重ねていきそうです。

自家栽培の夏野菜や根菜。間引きにんじんがおいしい

収穫した玉ねぎなどは自家製ソースに
<撮影/森本菜穂子 取材・文/野崎 泉>
亀谷靖之、千晴(かめたに・やすゆき、ちはる)
2008年より「カピン珈琲」として出張喫茶などを中心に活動。2012年、山口市の自宅敷地内に、珈琲豆御渡所をオープン。不定期で自宅の多目的スペースを活用した展示会も行う。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです