• 離れて暮らす高齢の親へ、“つくりおき”のちょっとした気づかいを。実家に料理を届け始めて20年以上の大先輩、料理研究家の“グー先生”こと林 幸子さんに、楽しみながらつくり、衛生的に食べてもらうために大切な6つのポイントを教わりました。
    (『天然生活』2021年7月号掲載)

    ポイント1
    メニュー名でも、食べ方でもいい。手書きのひと言を添えてみる

    林さんは料理ひとつひとつにマスキングテープを貼り、料理名や食べるときの注意点、賞味期限などを記しています。

    「ラベルで、どんな料理なのか理解してもらえます。メニュー名も複雑なものは避けて“洋風煮込み”“中華風野菜炒め”など、高齢の方にもなじみのあるものを」

    手紙を書く時間がなくても、手書きのひと言で心が届きます。

    画像: 文字は読みやすいように大きく、簡潔に。「レンジでチン1分」「温めずにそのまま」など食べ方を記すと、親も迷わない

    文字は読みやすいように大きく、簡潔に。「レンジでチン1分」「温めずにそのまま」など食べ方を記すと、親も迷わない

    ポイント2
    ここだけはと頭を切り替えて「使い捨ての小さな容器」を選ぶ

    「基本は日常のつくりおきの延長ですが、ホウロウなどの繰り返し使える保存容器に入れて送るのはひかえています。容器を洗うことや送り返すことも、親の負担になりますからね。お互いに楽をするためにも、プラスチック製の使い捨て容器を活用」

    1回分の食べきりサイズに小分けして入れれば、取り分ける手間が省け、直箸の防止にもなります。

    画像: 温めて食べる料理には、電子レンジ対応の容器を。透明容器なら中身がよく見えて、食べ忘れの防止に

    温めて食べる料理には、電子レンジ対応の容器を。透明容器なら中身がよく見えて、食べ忘れの防止に

    ポイント3
    冷蔵庫と相談しながらメニューを決める

    「親に届けるための料理は、特別なものでなくて大丈夫。夕飯を多めにつくって分けたり、冷蔵庫にあるものでスープをつくったりで十分。毎回買い物から完璧に……と考えると疲れてしまって、長続きしません」

    定番的なおかずや具だくさんの汁ものは、年齢を問わず喜ばれるもの。

    料理を通して、自分のふだんの暮らしぶりを伝える気持ちで取り組むのがコツです。

    画像: 林さんの定番は、冷蔵庫のはんぱ野菜を詰め込んだミネストローネ。多種類の野菜をとれて、心も満足

    林さんの定番は、冷蔵庫のはんぱ野菜を詰め込んだミネストローネ。多種類の野菜をとれて、心も満足

    ポイント4
    冷凍せずに冷蔵保存。クール宅配便を活用する

    日持ちや衛生面を考えて冷凍保存で送りたいけれど……。林さんは基本的に冷蔵庫保存がおすすめと語ります。

    「冷凍してしまうと、解凍することが億劫になり、長期間食べられずに保管されてしまうこともあります。量も多くしすぎずに、2~3日で食べきれる程度にすると安心です」

    小さめのダンボール(60サイズ)で、クール便で送ります。

    画像: 料理は完全に冷まし、素手で触れないようにして容器に詰め、保冷剤もしっかりと入れましょう

    料理は完全に冷まし、素手で触れないようにして容器に詰め、保冷剤もしっかりと入れましょう

    ポイント5
    暑い季節はとくに食材が傷みにくい処理を

    高温多湿になる夏場は、とくに気を付けたいのが衛生面。

    食品が傷みやすい温度は20~40℃。食中毒の予防には、食べものを早く冷ます工夫が必要です。

    「料理ができ上がったら、熱いうちに1食分ずつポリ袋に入れ、氷水につけて急冷します」

    このとき、袋内の空気を抜き、上部分をひも状にして結ぶ林さん式“八の字結び”で閉じれば、液体がこぼれません。

    画像: 中身を取り出すときは、器において袋の端をはさみで切れば、手が汚れずスムーズです

    中身を取り出すときは、器において袋の端をはさみで切れば、手が汚れずスムーズです

    汁ものだってこぼれない!
    “八の字結び”のやり方

     料理の量は袋の半分以下に抑え、袋の中の空気をできるだけ抜いて、片手で持つ。

    画像1: “ひとり暮らし”になった高齢の親に届ける「作り置き料理」おいしく楽しく続けるために、気を配りたい6つのポイント/料理研究家・林幸子さん

     もう片方の手で袋上部を持ち、料理を回転させて上へねじる。上半分をかたいひも状にする。

    画像2: “ひとり暮らし”になった高齢の親に届ける「作り置き料理」おいしく楽しく続けるために、気を配りたい6つのポイント/料理研究家・林幸子さん

     人差し指をかけて輪をつくり、根元にひもを1回転させてから輪の中にひもを通して完了。

    画像3: “ひとり暮らし”になった高齢の親に届ける「作り置き料理」おいしく楽しく続けるために、気を配りたい6つのポイント/料理研究家・林幸子さん
    画像4: “ひとり暮らし”になった高齢の親に届ける「作り置き料理」おいしく楽しく続けるために、気を配りたい6つのポイント/料理研究家・林幸子さん

    ポイント6
    だしやカット野菜を一緒に届けるのもおすすめ

    完成品の料理ばかりではなく、未完成の「キット」を送ることもあるという林さん。

    「野菜を食べやすい大きさに切ってパック詰めしたものは、重宝がられますよ。スティックサラダや汁ものの具に使ってもらいます。料理へのハードルが一段下がるみたい」

    生野菜と加熱用野菜は分けて保存。食べ方のメモを貼れば、受け取った側も使いやすい。

    頼れる味方
    「自家製だし」も一緒に送ろう

    濃いめのだしは、ふだんの煮ものや汁もの、お茶漬けなどに活用してもらえます。

    小さめのペットボトルに熱々のだしを上まで注いでふたをし、横に寝かせればふたの消毒を兼ねることができます。

    画像: だし用のボトルは、かたいタイプを選ぶこと。水でよく洗って使います。ブラシなどで内部を洗うのは、雑菌の原因になるので注意

    だし用のボトルは、かたいタイプを選ぶこと。水でよく洗って使います。ブラシなどで内部を洗うのは、雑菌の原因になるので注意



    〈撮影/有賀 傑 取材・文/河合知子〉

    林 幸子(はやし・ゆきこ)
    料理研究家。東京・表参道の料理教室「アトリエ・グー」主宰。“グー先生”の愛称で雑誌、TVで活躍中。著書は『親に作って届けたい、つくりおき』(大和書房)など多数。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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