(『天然生活』2022年5月号掲載)
堀川波さんが5月にやりたい初夏の楽しみ
一年のうちでも過ごしやすい5月は、植物の清々しい息吹を家に招き入れるのに最適な時季。夏への準備も始めましょう。
堀川波さんの季節の楽しみ方を見ていると、伝統に対する敬意や憧れと、「いまの暮らしで行うなら」という発想の、バランス感覚が絶妙です。
たとえば「端午の節句」の「軒菖蒲」。本来ならば軒先や瓦屋根から菖蒲とヨモギの束を下げるものですが、色のきれいなひもで結んでスワッグにして玄関ドアに飾ります。
大きな五月人形を飾るのはひと苦労ですが、折り紙で折った兜を飾るのは気軽です。
「小さいものでも兜や鯉のぼりといったモチーフがあるとやっぱり、『5月が来たな』と実感できますし、自分もなんだかうれしい。負担にならない加減で、楽しめるといいですよね」
また行事ごとは、周りにギフトを贈るきっかけにもなります。ポイントはお返しが負担になるような大げさなものではなく、手頃なものや手づくりしたものにすること。
それが「最近元気?」と声をかける、コミュニケーションツールになります。
「母の日といえば、子どもや父親が母に花やプレゼントを贈る日になっていますが、友人が贈ってもいいですよね。自分のことはつい後回しにしてがんばる友人に、エールを贈る気持ちで。そんなふうに発想を柔軟にしていけば、楽しみ方も増え、行事ごとも楽しくなるのではと思います」
5月1日
新茶は水出しで、色と味を楽しむ
立春から数えて88日目を指す「八十八夜」。この時季に摘んだ新茶は栄養価が高く、うま味が強いとされています。

透明のグラスに入れると、新茶のグリーンもよく見える。お手製の籐のコースターを組み合わせて、見た目もすっきり涼し気に
緑茶は水出しにするとビタミンCが壊れずに残り、苦味は抑えられるかわりに甘味が強く出るそうです。
「毎年5月はグラスを新調したり、手持ちのガラス器を漂白してピカピカに磨いたりしてました。今年はそこに、新茶の味と色を楽しむことを加えたいと思います」
5月4日
「ゴールデンウィーク」はベランダガーデニングを
どちらかというと、カラフルな花よりグリーン派。家の中にも観葉植物は欠かさず、常に緑がそばにある暮らしをしている堀川さん。
気温が上がってきたゴールデンウィークごろは、ベランダガーデニングの季節到来です。

小さいけれど光がたっぷり注ぐベランダは、ミニガーデニングに格好の場所。「最近は地域の園芸活動にも参加中。緑に触れる楽しさを再確認しています」

この日植え替えをしたのはローズマリーやベビーリーフなど。「食卓にちょっと緑が欲しいときに、こういうのが重宝するんです」
「近所のホームセンターで苗を買ってきて、鉢に植え替えるくらいでもすごく楽しい。植物もぐんぐん育つ時季ですから、緑に触れるだけでこちらも元気が出ます」
5月5日
「こどもの日」のお飾りはシックなモノトーンで
「息子も高校生、『こどもの日』を喜ぶ年齢ではなくなってきました。でもだれかのためではなく、自分自身が楽しみたいから、お飾りを出すようにしています」

木目が清々しい折敷に実家から譲り受けた小さな三方を置き、折り紙の兜をのせる。小さな花びんにベランダで摘んだ緑を入れ、「いせ辰」で購入した和紙モビールの鯉を添える。このくらいなら、準備も片づけもラクチン
ポイントは仰々しくないもの、黒や白、グレーなど無彩色を中心にして、シックにまとめること。
折り紙で折る兜は手軽ですが、確実に季節感が出るアイテム。

昨年つくった端午の節句の「吊るし飾り」も、黒と白のモノトーンでまとめたそう
全体の印象が軽やかなので、ふだんのインテリアになじむのも特徴です。
5月5日
菖蒲のスワッグで一年の健康を祈る
古くから「邪気を祓う」といわれてきた菖蒲の葉。
最近はこどもの日が近くなると、花屋やスーパーなどで気軽に手に入るようになりました。
堀川さんは近所で摘んだヨモギと一緒に束ねてスワッグにし、玄関に飾って「軒菖蒲」代わりにしているそう(本来は軒の上や屋根などに置く)。

ヨモギも菖蒲と同じく、邪気を祓うといわれているそう。また菖蒲の葉を子どもの頭に巻くと、頭がよくなるという言い伝えもあるとか
夜は束をそのまま浴槽に入れ、「菖蒲湯」に。さわやかな香りで、リラックス効果も抜群です。
5月11日
「母の日」は、ママ友に自分をいたわる小さなギフトを
まだお子さんが小さなママは、育児の苦労がピークなのに、母の日はスルーされてしまいがち。
そんな年下の友人に向けて、「自分をいたわってね」と小さないやしになるようなプチギフトを渡すようにしているという堀川さん。

もらってうれしかった「エオラ」のハンドパックと、友人に贈って喜ばれたネックレスにもなるマスク&めがねストラップ
「自分の経験を思い出すと『気をかけてもらっているな』という気持ちがうれしいんです。お返しに悩まないような、価格が手頃でさりげないものがおすすめです」
プチギフトのラッピングアイデア
1 透け感のある薄葉紙を準備し、右端を三つ折りする

2、3 裏返してギフトを中央に置き、左端、右端を順に中央に向かって折りたたむ(三つ折りした部分が正面に来るように)


4 上端と下端を裏面側に向かって三つ折りし、マスキングテープで留める

<イラスト/堀川 波 撮影/近藤沙菜 構成・文/田中のり子>
堀川 波(ほりかわ・なみ)
おもちゃメーカー勤務を経て独立し、イラストレーター、手仕事作家として活躍。「自分のできること、好きなこと」を仕事にしている。おしゃれや暮らしの工夫などを綴ったイラストエッセイが好評。著書『45歳からの定番おしゃれレッスン』(PHP)が好評発売中。インスタグラム:@horikawa._.nami
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです