• 野菜などと比べて“食材”という認識がほとんどされていない「雑草」ですが、実はおいしく食べられる植物として注目を集めています。本記事では、雑草学を学び、雑草を使った料理を楽しむ雑草料理研究家・前田 純さんの著書『おいしい雑草図鑑』(扶桑社)より、スベリヒユの特徴とおいしい食べ方を紹介します。

    ぬめりと酸味のある多肉質の葉が美味
    スベリヒユ

    画像: ぬめりと酸味のある多肉質の葉が美味 スベリヒユ

    スベリヒユ科スベリヒユ属 1年草
    滑莧 Portulaca oleracea

    原産地は南アメリカ。日当たりのよい道端や畑地などでよく見られる。

    茎は赤紫色を帯び、地面をはって広がる。葉はへら状で基部はくさび形。

    名前の由来は諸説あり、葉や茎に滑るような光沢があることや、ゆでたときにぬめりが出ることなどといわれる。

    花期は7〜8月で花は黄色。日が当たると開花し、日が落ちて暗くなると閉じる。

    花、葉、茎、根は初夏から秋にかけて採取できる。

    くせがなく、多肉質の葉にはぬめりとしゃきしゃきした食感がある。ゆでたものは干して保存食にも。

    山形県では野菜として認知されており、「ひょう」と呼ばれ、スーパーにも並んでいる。また、ヨーロッパでは近縁種のタチスベリヒユが「パースレイン」と呼ばれ、食用に栽培されている。

    葉や茎には抗酸化物質であるグルタチオンやブレインフード(記憶力の低下を改善し、脳の老化予防をしてくれる食品)の代表的な栄養物質であるオメガ3脂肪酸が含まれる。オメガ3脂肪酸は、血圧の安定や心臓冠動脈病などにも有効とされている。

    生薬名は「馬歯莧(ばしけん)」。解毒、止痢、涼血止血、通淋などに効果があり、皮膚症状や下痢、膀胱炎、咳止めなどにも使用される。

    茎の赤、葉の緑、花の黄、根の白、実の黒が、陰陽五行説の五色と五臓を持っており、縁起のよい食べ物。

    近年は猛暑で野菜が不作となる年も多いが、暑さに強い本種は夏の野菜としても期待できる。

    おいしい時期

    6~9月(花を楽しめるのは7、8月)

    生育場所

    道端、畑地

    分布

    日本全土

    おすすめ調理法

    ・サラダ
    ・ゆでる
    ・煮る
    ・焼く
    ・炒める
    ・揚げる

    利用部位

    花、葉、茎、根

    注目の栄養成分

    ・ビタミンA
    ・鉄分
    ・オメガ3脂肪酸
    など

    見分け方のポイント

    似た植物にハナスベリヒユがあり、同様に食用できる。品種改良された園芸種で別名のポーチュラカが広く知られる。

    画像: 見分け方のポイント

    ハナスベリヒユは、
    ① スベリヒユに比べて花が大きい
    ② 花の形や色の種類が多い
    ③ 花壇や庭に植えられる
    といったことから区別がつく。

    スベリヒユのおいしい食べ方

    和えものやサラダに

    ゆがいて辛子じょうゆで和えるのが、昔ながらの食べ方。本種の特徴であるぬめりと酸味が味わえる。

    生のままサラダにするとより食感が生かせる。青臭さが気になる場合は30分間水にひたす。

    画像: 和えものやサラダに

    ハンバーグの具材に

    しゃきっとした食感を生かして、ハンバーグの具材にも。事前に軽くゆがくのが味わいをよくするコツ。青臭さが消えて食べやすくなる。

    ゆですぎると歯ごたえがなくなるので注意。

    画像: ハンバーグの具材に

    〈写真/前田 純〉

    ※本記事は『おいしい雑草図鑑』(扶桑社)からの抜粋です。

    ▼雑草料理研究家・前田 純さんの記事はこちら

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    『おいしい雑草図鑑』(前田 純・著/扶桑社・刊)

    画像: 雑草料理研究家に聞く、おいしい雑草「スベリヒユ」の食べ方。ぬめりとしゃきしゃき食感の“多肉質”の葉が美味/前田純さん

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    【CONTENTS】
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    ● 採取の服装、道具と採取の方法
    ● Part.1 道端・あぜの雑草
    ● Part.2 野原・畑地の雑草
    ● Part.3 荒地・河川敷の雑草
    ● Part.4 水田・湿地・海岸の雑草
    ● Part.5 林縁・林内の雑草
    ● Part.6 毒草


    前田 純(まえだ・じゅん)
    1982年8月、石川県生まれ。雑草料理研究家。京都大学農学研究科農学専攻雑草学研究室で雑草学を学び、在学時より、NPOや野外調査等にて雑草を題材として、ダッチオーブンや七輪等を用いて料理を行う。2015年2月に合同会社つむぎてを設立。休耕田や耕作放棄地で無農薬・無化学肥料の雑草を栽培して、食品や化粧品を販売している。



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