キヌサヤのように利用できるつる性の豆
カラスノエンドウ

マメ科ソラマメ属 2年草
烏野豌豆 Vicia angustifolia var. segetalis
豆が黒く熟すのをカラスにたとえたのが名前の由来。別名はヤハズエンドウ。
豆殻を笛にした遊びからピーピー豆の俗称も。
原産地はユーラシアから地中海沿岸。この地方で麦作が始まった頃に野菜として栽培されるようになった。
つる性の植物で、葉は8〜16枚の小葉からなり、全体に柔らかい毛が生えている。
花托(かたく。花びらや雌しべ、雄しべなどを支えている部分のこと)には蜜腺と呼ばれる黒い点があり、ここから蜜を出してアリを呼び寄せ、害虫を追い払っている。
花は紅紫色で、花期は3〜6月。茎、葉、花、さや、種を食用とする。若葉や若芽は、春から初夏に採取でき、暖地では冬も利用できる。
初夏の若いさやを使った天ぷらは、素材の甘みがそのまま感じられ、サクサクとした衣の歯触りもいい。揚げたてを抹茶塩で食べるのがおすすめ。キヌサヤと同じように卵とじや天ぷらにも。
若い豆はさやから出してミキサーで潰し、ペーストにしてゼリーに。杏仁豆腐のような香りがあり、甘さが控えめなので食べ飽きない。
成熟した豆は沸騰した湯で柔らかくなるまでゆで、好みの味付けで煮豆として利用する。
葉や茎からとるだしのまろやかな風味は小さな子どもにも好評。味噌汁をつくると深みが出る。
豆は乾燥させれば保存も利く。
成分に含まれるクエルシトリンは利尿、便通の改善、解毒、血圧の安定に効果的。ポリフェノールの一種であるアピインは抗酸化作用、高血圧抑制、鎮静、食欲増進も期待できる。
カラスノエンドウの豆知識
本種より大型でヨーロッパ原産のオオカラスノエンドウは緑肥(植物そのものを田畑にすき込んで肥料として利用すること)用として輸入され、野生化した。本種に比べて全体に大きく、茎が太く、毛が多く、小葉の先端はくぼみ、豆は熟すと褐色になる。こちらも食用にできる。
おいしい時期
1~8月、12月(花を楽しめるのは3~6月)
生育場所
道端、野原
分布
日本全土
おすすめ調理法
・サラダ
・ゆでる
・蒸す
・焼く
・炒める
・揚げる
利用部位
花、葉、茎
注目の栄養成分
・ビタミンB1
・クエルシトリン
・アピイン
など
見分け方のポイント
秋に発芽し、冬の間も枯れずに地表で寒さをしのぎ、翌春になると再び成長を始める。

熟した黒色の豆(写真右)は、浸水せずにご飯と一緒に炊いて豆ご飯として食べられる。

お茶にして飲んでから豆ご飯にすると2度楽しむことができる。緑の豆も食用可能である。
カラスノエンドウのおいしい食べ方
混ぜご飯などに
葉や茎にも豆と同じ甘い香りがある。熱いお湯でさっとゆで、柔らかくなったらじゃことゴマを加えてご飯に混ぜると、素朴な味わいの「カラスノエンドウご飯」になる。
豆ご飯も美味。

〈写真/前田 純〉
※本記事は『おいしい雑草図鑑』(扶桑社)からの抜粋です。
▼雑草料理研究家・前田 純さんの記事はこちら
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【CONTENTS】
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● 採取の服装、道具と採取の方法
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● Part.2 野原・畑地の雑草
● Part.3 荒地・河川敷の雑草
● Part.4 水田・湿地・海岸の雑草
● Part.5 林縁・林内の雑草
● Part.6 毒草
前田 純(まえだ・じゅん)
1982年8月、石川県生まれ。雑草料理研究家。京都大学農学研究科農学専攻雑草学研究室で雑草学を学び、在学時より、NPOや野外調査等にて雑草を題材として、ダッチオーブンや七輪等を用いて料理を行う。2015年2月に合同会社つむぎてを設立。休耕田や耕作放棄地で無農薬・無化学肥料の雑草を栽培して、食品や化粧品を販売している。