岩手県岩泉町で、自然の色彩を毛に染め、丹念に紡ぐ活動を38年にわたり続けてきたスピンクラフト岩泉の代表・工藤厚子さん。家庭第一を掲げ、儲けよりも「とにかく続けよう」と始めた手仕事は、今や地域の文化となっています。
(『天然生活』2023年7月号掲載)
(『天然生活』2023年7月号掲載)
やさしい自然の色合い世界にひとつだけの毛糸
スピンクラフト岩泉の毛糸の一番の魅力は、紡いだ糸を染めるのではなく、毛を染めてから紡ぐことにあります。
紡いだものを染めると全部同じ色になってしまいますが、染まり具合が微妙に異なる毛を紡ぐことで、色に変化が表れ、それが個性となるのです。
また紡ぐ人によって、糸の太さや撚りに微妙な違いが出てくるので、毛糸のラベルには染料の植物と紡ぎ手の名を記載しています。

自然の懐深い色合いと手紡ぎの糸に魅せられ、工藤さんのところに10年来通う手編み作家・島絢子さんの編んだセーター
「長年のファンには、だれだれの紡ぐ糸が好きという方もいて、好みの色がなければ、その紡ぎ手でこの色をという注文も受けています。以前、ショッキングピンクの糸が欲しいという要望を受けてでき上がりをお見せすると、こういう色じゃないといわれて、その後も何度かやりとりを重ねました。古い書物に酢酸を使う方法があって試すと前とは違う色になり、ようやくご納得いただけて。私は好きでやってきて、すっかり夢中になり、いまも続けています」
スピンクラフト岩泉
代表・工藤厚子
住所:岩手県下閉伊郡岩泉町袰綿字本町40
電話:0194-25-4006
<写真/落合由利子 構成・文/水野恵美子>
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです