• 岩手県岩泉町で、自然の色彩を毛に染め、丹念に紡ぐ活動を38年にわたり続けてきたスピンクラフト岩泉の代表・工藤厚子さん。​家庭第一を掲げ、儲けよりも「とにかく続けよう」と始めた手仕事は、今や地域の文化となっています。​
    (『天然生活』2023年7月号掲載)

    歳をとってから心の拠り所が必要

    「昔、年寄りたちに、老いてみろといわれた言葉が、いま、しみじみと。やっぱり老いてみないとわからないことがあります

    工藤さんは現在92歳。昨年足を骨折してリハビリに励み、少しずつできることをやり始めています。

    画像: 「いい道具がないと、いい糸はつくれません」。30年以上使っている糸紡ぎ機。ペダルを足で踏むと回転し、糸の撚り具合は回転のかけ方によっても変わってくる。かけすぎると硬い糸になり、その加減が難しい。「いい毛だけそろえるというのはかえってだめです。短い毛が入っていくことで、いい具合に撚りがかかります」

    「いい道具がないと、いい糸はつくれません」。30年以上使っている糸紡ぎ機。ペダルを足で踏むと回転し、糸の撚り具合は回転のかけ方によっても変わってくる。かけすぎると硬い糸になり、その加減が難しい。「いい毛だけそろえるというのはかえってだめです。短い毛が入っていくことで、いい具合に撚りがかかります」

    「これからは目もだめだし、力仕事もだめ。紡ぐぐらいはなんとかなるかと思って。ただ、若いときの気分で1日100gを紡ごうとは考えないほうがいい。でも、歳をとったからってラクをしてもだめです。最後の最後まで、自分で自分をこき使って。何もしなければ、もっとみじめだと思いますしね」

    「私の母は『女はただ座るんじゃない、手仕事を持って座れ』というのが口癖で、ただ座っている女の姿ほど、みっともないものはないというような、とても厳しい人でした。ただ、私が結婚をしてからは相談相手となってくれ、私のやり始めたことに対して『とにかく続けろ』と応援してくれていました。続けることを努力していけばいいのだし、心の拠り所になれば、それでつながっていく。歳をとってから、それは必要なこと。歳をとってから心の拠り所があるということは、こんな幸せなことはないと。私の仕事について何の批判もしなかった母で『いい仕事を始めたな』っていわれたことを覚えています。手仕事をしていると純粋になれます。すべてをそれにだけ集中できる、そういうものがあって幸せです」

    スピンクラフト岩泉
    代表・工藤厚子

    住所:岩手県下閉伊郡岩泉町袰綿字本町40
    電話:0194-25-4006



    <写真/落合由利子 構成・文/水野恵美子>

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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