季節の変わり目に悩まされるメンタル不調
「季節の変わり目はメンタルに響く」
そんな言葉をよく聞きますが、まさにそのとおり。
心の病を抱えている私は、この時期、本当に毎日が感情のジェットコースターに乗せられているよう。
おそらく更年期障害の影響もあるのでしょうが、突然悲しくてしかたなくなり涙が止まらなかったり、急にいらいらして持ちきれない憤りに心が振り回されてしまいます。
そうした状態が続くと、精神は悪い方向へ向かい、つい「消えてしまいたい」とまで追い詰められることも……。
ストッパーは猫たちの存在
今でこそ、表面上はパニックを抑えられるようになりましたが、20代~30代の頃はとても自制できず、何度も死を選びそうになりました。
そして、嘆く私のそばにいることで、もともと穏やかだった夫も頭に死がよぎることもあったのだそうです。
そんなとき、夫が「つい投げ出しそうになる心」をなんとか持ち直すことができた一番の理由は「猫たちがいること」。
どれだけ生きていることがつらくても、この子たちがいる限り置いていくことは絶対にできない!と、「たとえセリが死んでしまっても、自分は、猫を全員看取るまで生き続けよう」と固く誓ったのだそうです。

「好き」以上の「信頼感」が、お互いを救う
それから私自身も自分を取り戻し、今、心の病を持ちつつも、それなりに穏やかでしあわせといえる生活を送っていますが……。
それでも、私の不安定さは、猫にもいまだに伝わるのかもしれません。
というより、夫の無償の愛……自分を犠牲にしても猫を選ぶという生半可ではない心が猫に届いているのでしょう。

我が家の猫たちは、どれだけ私が大好きなウェットフードをあげようと、自分の分のお刺身を焼いてふるまおうと、それよりも、ただあたりまえに猫を受け入れる夫のほうが大好き。
物で釣ろうとする私ではなく、たとえば、猫が膝に乗ってきたときに、トイレに行きたくても動かず乗せ続けたり、何十分でも、何時間でも、猫が満足するまで撫で続けたりする夫に「好き」以上の「信頼」を感じているように見えるのです。
猫は「のんきな人間」の方がお好き!?
……と、これだけ持ち上げておいてなんですが、実はうちの夫は意外とぼんやりさん。
猫たちのごはん皿にドライフードがからっぽでも気づかず映画に夢中になっていたり、猫が鳴いていてもつい熟睡していたりが頻繁にあります。
そんなとき、神経質な私はすぐに気づいて対応するのですが……、それでも猫たちは、夫のほうが好き。
きっと、私の「いつでも気づく」という「ピリピリ感」よりも、「ちょっとのんき」なくらいの夫のほうが気が抜けるのかもしれませんね。
人間の子育ても同じなのかもしれませんが、「安定」「リラックス」「無償の愛」が、どんなご馳走よりも猫たちの心を豊かにするのかな?と日々、夫の姿に気づかされます。
お互いのいいところを認め合って、生きていく
とはいえ、私は私。夫のようにはなれません。
夫のいいところを真似しながら、私なりの愛し方……たとえば、猫の不調には神経質ゆえ一瞬で気づくとか……で、補い合っていければと思います。
トイレは猫が乗っていてもがまんせずに行く。でも、帰ってきたら、また乗せる。
それくらいの「ええかげん(いい加減)」でええかなあ、と。
こんなふうに気を抜けるようになったのは、結果的に、自分自身の心の病にもいい影響を与えているなと、猫たちに教えてもらう毎日なのです。

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咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」