鏡で“舌の状態”を見てみよう
「舌診」でセルフチェック
舌の状態から、気・血・水(人間の体を構成する要素)の状態、病気の性質や体の状態を表す「寒熱」の区別などがわかります。
毎朝、食事の前に鏡で舌をチェックして、養生による変化も確認しましょう。
※「瘀血」の舌は紫っぽい色。黒い斑点やシミがあったり、舌の裏の静脈が黒く腫れあがっていることも。
「胆虚(痰湿)」タイプの原因と養生法
厚みがあり、白っぽい苔が全体につき、舌のふちに歯形がくっきりついている。

〈原因〉
胆は消化器の一部として考えられ、食べすぎや飲みすぎ、食事の偏りによってダメージを受けやすい。体に余分な老廃物がたまった痰湿の状態ともいえる。
〈養生法〉
脂っこいもの、甘いもの、味の濃いもの、生ものや冷たいもの、アルコールを避けた食事を。薄味で温かい「ごはんと味噌汁」などの粗食が理想的。夜は、胆のメンテナンス時間となる23時までに就寝するようにする。

「血虚」タイプの原因と養生法
全体がごく淡いピンクで、舌に厚みがなく小さめ。

〈原因〉
月経のある女性は血虚になりやすく、目や脳を酷使する人も血が不足しやすい。血は食べものが消化吸収されてつくられるが、胃腸が弱っていると血不足に。
〈養生法〉
補血食材(ほうれんそう、にんじん、黒豆、ごま、肉類全般、ぶどう、松の実など)を積極的にとること。目や脳の疲労につながるスマートフォンの使用を控え、「血」の消耗を抑えるために早寝を心がける。21時に寝るのがベスト。

「陰虚」タイプの原因と養生法
細みで、色は赤みが強い。表面がひび割れていることも。

〈原因〉
寝不足や過労、加齢などで、体の潤い(陰)が不足した結果、陽が過剰となって熱がこもりやすくなる。痩せ型の人や更年期世代に多い傾向がある。
〈養生法〉
補陰食材(いかやあさり、卵、はちみつ、きくらげ、乳製品など)と、潤いを生むとされる五味の「酸」に属する梅やレモン、酢などを積極的にとる。潤いは発汗で失われるため、激しい運動やサウナ、激辛料理は避けること。

「気虚」タイプの原因と養生法
厚めで淡いピンク。波を打つような歯形がつきやすく、まだらな苔がつくことも。

〈原因〉
過労や寝不足をはじめ、十分に食べていないことが原因。胃腸の消化吸収力が低下し、食べても「気」をつくれない状況や、過度な気遣いで気を消耗することも。
〈養生法〉
過労や寝不足の人は何よりまず休息し、補気食材(米、いも類、肉類、ブロッコリー、えび、しいたけ、大豆、黒砂糖など)をとること。消化不良の自覚がある人は、弱火でじっくり煮たおかゆか、少量のごはんをよく噛んで食べるとよい。

「気滞」タイプの原因と養生法
両側が赤く、中央に白または黄色の苔がついている。

〈原因〉
生理前はストレスを感じやすく、その影響で、情緒を管轄する「肝」が弱り、気が滞りやすい。また、運動不足による循環機能の低下も気滞を招く。
〈養生法〉
気をめぐらせる理気食材(柑橘類や香味野菜、ピーマンやキャベツ、玉ねぎなど)を食べる。ストレッチや散歩など軽い運動を習慣にし、アロマオイルなど好きな香りでリラックスする時間を。「血虚」タイプの養生法もあわせて取り入れて。

「実熱」タイプの原因と養生法
全体が赤く、縮こまった感じ。黄色っぽい苔がある。

〈原因〉
体温が高く汗っかきなどの体質的な要因もあるが、辛いもの、油脂や糖分が多いものなど、体に熱を生む食べものを好んで食べているケースも多い。
〈養生法〉
とうがらしやしょうがなどの辛い料理、揚げものや甘いものを減らし、清熱作用のある野菜や果物(トマト、なす、白菜、パイナップルなど)、五味の「苦」にあたる緑茶などをとる。コーヒーなどの刺激物は、熱がこもりやすいため控えて。

〈取材・文/熊坂麻美 イラスト/はしもとゆか〉
櫻井大典(さくらい・だいすけ)
国際中医専門員、日本中医薬研究会会員。中医学の知恵をわかりやすく発信するSNSが人気を博す。電話やオンラインで漢方相談を受け付けている。『こころゆるませ漢方養生』(扶桑社)など著書多数。
https://tamarikanpo.com/