(『天然生活』2024年6月号掲載)」
自分を信じてできることからスタート
京都の町家をリノベーションし、アトリエ兼住まいにする、庄本彩美さん。
お弁当や保存食づくり、ケータリングなどを行い、食を軸に活動しています。
出産を控え、お弁当はしばらくお休みですが、常連さんが再開を待ちわびます。とりわけ人気なのが、鮭弁。

お弁当が活動を広げるきっかけになった。アトリエのまんなかにある円卓はクラウドファンディングで製作
「鮭弁って年代性別関係なく、みんな大好きですよね。自分ならどうつくるだろうって考えたのが、つくりはじめたきっかけでした」
生のサーモンを塩麹に漬けてひと味おいしく。ごはんにゆずおかかをふりかけ、のりはちぎって食べやすく。季節の味も添え、ていねいに手をかけたお弁当です。

この日の鮭弁には、ひかりれんこんとすぐきのコロッケ、菜の花といった季節の味も。サーモンは近所の魚屋から
庄本さんの以前の仕事は、看護師。両親が歯科技工士だったこともあり、医療の道が浮かんだそう。
総合病院に勤め、栄養管理を担当したとき、食べて元気になる患者さんを目の当たりにし、食の大事さに気づいたといいます。

総合病院に勤め、症状の重い病棟も担当。「職場で育ててもらったから、新しい仕事でもちゃんと成果を出したいと思います」
「ただ栄養を摂ればいいというものではない。おいしく食べてこそ元気になるんですよね。だから味付けも、盛りつけもとても大事。『食』って面白いと思いました」
看護師の仕事はやり甲斐があるけれど、ハードワーク。自分自身が体調をくずしたときも助けになったのは、食。実家の手づくりの味に元気をもらったそうです。
「うちは山口県の兼業農家で、祖母が畑仕事し、保存食も手づくり。味噌は麹からつくっているんです。実家で暮らしていたときは、当たり前で気づかなかったけど、離れてみて、“こんなにおいしかったっけ!?”って驚きました」

実家から届いた野菜。両親が退職後、祖母から畑仕事や米づくりを引き継ぐ。平飼いする鶏の卵、味噌や奈良漬けも。庄本さんの食の原点
“自分なんて”と思うのをやめたら、道がひらけた
身をもって食の大切さを実感し、だんだんと仕事にしたい気持ちが膨らみました。
「なかなか自分に自信がもてなくて、“私なんて”“私なんかに”と思うクセがあったのですが、“やりたいことなら、やってみてもいいんじゃない”って、自分に許可を出すことにしたんです。そこから、一気に進みはじめました」
気になる料理教室やワークショップがあれば積極的に参加し、自宅に人を招いては料理を振る舞う。

キッチンでは100人分のお弁当が仕込める
やりたいことは言葉にして、どんどん周りに相談しました。
「相談すると覚えてくださって、マルシェやイベント出店に誘ってもらって道がひらけていきました。飲食店で働いた経験はなかったから、いきなりお店を始めても来てくださると思えなくて、どこでも出店できるお弁当は私にはぴったりでした。病院の同僚たちがコンビニ弁当やインスタント食品ですませているのを見て、忙しい人にこそちゃんと食べてほしいと思ったこともお弁当を始めた理由のひとつです。やりたいことは、自分の中にある。得意なことや頼れる友人......持っているものを生かして、いまできることからやってみる。スモールスタートはおすすめです」
<撮影/石川奈都子 取材・文/宮下亜紀>
庄本彩美(しょうもと・あやみ)
京都・堀川丸太町にアトリエを構え、「円卓」として活動。看護師から食の道へ転身。現在、出産を控え、お弁当やケータリングは休業中。保存食づくりはマイペースで続け、オンラインショップや京都の器店「若葉屋」などで取り扱い。アトリエはイベント開催時にオープン、スケジュールはインスタグラム@entaku_ayamii
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです