• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。腰痛を抱えながらの猫との暮らし。

    腰痛を抱えながらの猫との暮らし

    もしかしたら「実は自分も悩んでいて……」と思い当たる方も多いのではと思います。

    実は私も46歳にして、ついに、これに危機感をおぼえる出来事と遭遇しました。

    「ぎっくり背中」「坐骨神経痛」です。

    私は普段家で書き物をして生活しているので、座っていることが大半。ストレッチなどを心がけてはいるのですが、つい気を抜くと、あっという間に重度の腰痛が押し寄せてきてしまいます。

    だけど、うちにいる10匹の猫たちにはそんなことは分かりません。

    私が座ることもできず横たわっていても、そのうえに、まだ5歳なのにまるで中年太りのようなムチムチの男の子「全」がどしり。

    普段は夫のほうが好きなくせに、こんなときにかぎって、なぜか私のお腹から離れません。

    画像1: 腰痛を抱えながらの猫との暮らし

    整体の先生には「猫と寝るのはやめましょう」と言われたばかり。

    だけど、だからって、せっかくあまえてくれる全を下ろすことができるでしょうか?

    私はギシギシ負荷をかけられる腰を気合いで耐え、またもや腰痛を悪化させてしまうのです。

    画像2: 腰痛を抱えながらの猫との暮らし

    「ぎっくり」になってしまい、見直したこと

    さすがにこれではいけない! と決意したのは、そうして猫をのせて寝転がっている最中に、なんと「ぎっくり腰」にまでなってしまったとき。

    経験したことのない鋭い痛みが腰をつらぬき、トイレに行こうにも立ち上がることも困難に。夫に支えられ、なんとかもらさずにすんだものの、このままでは体は悪化するばかり……。

    そこで私が取った対策は、「猫たちのために“私の上“以上に快適な寝床を作ること」でした。

    画像: 「ぎっくり」になってしまい、見直したこと

    猫が集まる場所をつくって、別々で養生することに

    まず、私はエアコンをつけていると寒くてベッドで電気毛布もONにするのですが、その温かさが良いのだろうと、こんな時期ですが床暖房もONにしました。

    「お」という感じで、床暖房のあるリビングに猫たちが集まります。

    また、家中の座布団をかき集め、リビングのあちこちに配置しました。

    私のお腹ほどではありませんが、ふかふかが気に入ったらしく、そこでくつろぐ子も続出。大好きなダンボール箱もどんどん置きます。

    おかげで、晴れて私の体は「わざわざ乗るほどでもない場所」に降格したようです(泣笑)

    画像: 猫が集まる場所をつくって、別々で養生することに

    猫は人の痛みが分かる?

    それでも、誰よりも甘えん坊で焼きもちやき……でありながら、我が家で一番、人間の心が分かる「全」は、私の痛みも感じるのでしょう。

    寝転がる私のそばに寄り添い、私の手のひらをきゅっと摑み、時々、毛づくろいまでしてくれます。

    思えば、私のお腹にのっていたのも、私の身を案じてのことだったのかもしれませんね。

    私以外にも、時々「腰痛持ちだけど、猫にさみしい思いはさせられなくて……」とがまんされている方もいるのではと思います。

    今回、私もぎりぎりまでふんぎりがつかず、お腹にのる猫や、膝にのる猫の重みに耐えていましたが、症状は悪化の一途をたどりました。これでは、かわいい猫を撫でようとして「ぎっくり!」ということにもなりかねません。

    そんな方は、どうしてもつらいときは、「居心地の良い寝床・倍増大作戦」で、「同じベッドで寝なきゃいけない」から「場を共有することで安心する」という時間を作ってみてもよいかもしれません。

    そして元気になったとき、いっぱいいっぱいかわいがる。

    これこそが、「ふれあい」という一番の心のリハビリなのかもしれませんね。

    ◇ ◇ ◇ ◇ ◇


    画像: 猫は人の痛みが分かる?

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

    ブログ「ちいさなチカラ」



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