(『天然生活』2022年7月号掲載)
MINOU BOOKS・石井さんが選ぶ「夏の本と映画」8作品
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
夏の朝の成層圏

池澤夏樹著 中公文庫
漂着した南の島での生活を通して、自然の中での生活への憧れを描く。
「気持ちの動きや風景を表現する文体が、詩的で美しい。読んだあと、夏を感じる解像度が変わるような作品です」
ぼくがゆびをぱちんとならして、きみがおとなになるまえの詩集

斉藤 倫著 高野文子画 福音館書店
20篇の詩を通して考える、詩と言葉についての物語のような詩集。
「おじさんと子どもの日常のかけあいから、子どもの価値観が少しずつ変わって更新される様子に、夏休み感を感じます」
よあけ

ユリー・シュルヴィッツ著・画 瀬田貞二訳 福音館書店
ある湖が夜明けを迎えるまでの光景を、やわらかな色調で描いた作品。
「あまりにも静かで、衝撃を受けました。気持ちをまっさらにしてくれる、夏の朝に眺めたい美しい絵本です」
戦中・戦後の暮しの記録
君と、これから生まれてくる君へ

暮しの手帖編集部編 暮しの手帖社
読者が投稿した手記や手紙、絵、写真157点から、戦争体験をまとめた記録集。
「戦争が暮らしの目線から語られているので、改めて戦争は繰り返してはいけないという実感が芽生えます」
TRANSIT 53号 世界のスパイスをめぐる冒険

euphoria factory
スパイスの歴史や世界のスパイスとその効能など、スパイス事情を詰めこんだ一冊。
「旅という切り口で、スパイスを掘り下げた企画が、夏にうってつけ。スパイスについて楽しく学べます」
ブルーピリオド

山口つばさ著 講談社
絵を描くことの楽しさに目覚めた主人公の苦悩や美術を学ぶ姿を描く。
「絵を通して自分の内面に向き合い、感情表現が更新される。さまざまな葛藤を切り抜ける清々しさも夏に合います」
mid90s ミッドナインティーズ

2018年 アメリカ 監督:ジョナ・ヒルTCエンタテインメント
1990年代半ば、13歳の少年がスケートボードを通して成長していく姿を描く。
「人種も境遇も違う仲間が一緒に、スケボーで道をくだるシーンがいい。自分の経験にも重なります」
深呼吸の必要

2004年 日本 監督:篠原哲雄 バンダイナムコフィルムワークス
沖縄の離島のさとうきび刈りに参加した、7人の若者の交流をさわやかに描く。
「成長につながるきっかけをつかむような作品。夏の描写がある映画は、夏に観たいと改めて感じます」
ちょっぴり価値観を更新できる作品
衣食住などの暮らしまわり、ノンフィクションや自然に関する本を扱う「MINOU BOOKS」。店主の石井勇さんが選ぶのは、夏休みを感じられるような作品。
「夏休みは、非日常の長い休みのなかでふだんは出会わない人やものに出会い、些細な価値観が更新される期間。夏は成長できる時期といわれますが、成長ではなく少しのアップデート。本を読んだり、映画を観ることで、見えるものの解像度が上がる感覚を味わえるような作品に触れたいと思います」
夏に山登りをするときには本を必ず2冊持っていき、自然のなかで本を読むのが好きなのだそう。
「テントを張ってひとりでキャンプをするときは、時間があるので集中して本を読むことができます。冒険を描いた小説『夏の朝の成層圏』は、まさに山で読んだ本。自然、環境についての本など、自分の読む状況と重なるような内容の本だと、より楽しめて、深く考えるきっかけにもなる気がします」
夏の本と映画のお供
COFFEE COUNTYの浅煎りのコーヒー

Ethiopia Tabe Burka CWS Natural(銘柄は頻繁に変わります)/COFFEE COUNTY Kurume
お店でも使うコーヒー豆。
「浅煎りらしいみずみずしい果実感が、暑い夏にぴったり。アイスコーヒーでぜひ」
〈撮影/林 紘輝 取材・文/赤木真弓〉

石井勇(いしい・いさむ)
書店に勤める傍ら、デザインイベントの運営、インディペンデント音楽レーベルの運営、福岡市内の“まちの写真屋”などの活動を経て、2015年に耳納連山の麓、故郷のうきは市吉井町に本屋とカフェ「MINOU BOOKS」をオープン。“暮らしの本屋”をテーマに、日常に彩りを加える本をセレクトする。
https://minoubooks.com/
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです