(『天然生活』2024年8月号掲載)
自然に沿った暮らしで、汗をかける体に
「汗は天然のクーラーのようなもので、汗をかくと肌の上で水分が蒸発し、気化熱で体温が下がります。でも現代は、夏でも汗をかけない人が増えているようです」
そう語るのは、薬膳料理研究家の小鮒ちふみさんです。
暑いのに汗をかけないと、夏バテの一因になるだけでなく、熱中症を引き起こす恐れも。
かくいう小鮒さんも、農家になりたての頃は、夏の過ごし方を知らずにあまり汗をかけなかったため、農作業中にダウンしてしまうことがあったのだとか。

畑でズッキーニを摘果。夏野菜は成長が早いので、追われるように農作業
「私たちの体は、季節に合わせて汗腺を閉じたり開いたりしています。冬は閉じて、魔法瓶のように体内の熱が外に逃げないように、暖かくなってくると徐々に開いて、熱がこもらないようにしているんですね。ところが最近は、暑くなっても汗腺が開かず汗をかきづらい。汗をかけない病気もあるため一概にはいえませんが、エアコンが寒いくらい効いていたり、ストレスを感じていたり。現代は冷えやすい環境になっていることが汗をかきづらい一因だと思います」

小鮒さんの家は築150年の古民家
夏の「温活」と「食養生」で不調知らず
そこで、夏こそ「温活」をしてほしい、と小鮒さん。
一度冷えてしまうと温めるのにはエネルギーがいるため、なるべく冷やさない生活が肝心です。
露出しがちな首、手首、足首をカバーしたり、体を動かしたり、足湯をして体を芯から温めたり。
暮らしの中で冷えを取り、汗をかける体をつくっていくことが夏の暮らし方の基本。

縁側で足湯をする小鮒さん。夕方の散歩のあと着替えて足湯をし、夕ごはんの支度をするのがルーティン
そして何より大切なのは、旬の野菜を軸とした食養生です。
20代で胃がんを患った小鮒さんが元気に過ごせているのも、自然に即した食生活をしているからだといいます。
「なになに療法などといった難しいことではなく、旬の野菜からその季節に必要な栄養素を摂り、発酵食品を活用して腸内細菌のバランスを整える。そんなシンプルな食養生を続けてきたことが救いになりました」

乳酸発酵させてつくる漬物。赤は赤かぶ、大根、白はにんじん、大根、きゅうり。野菜の重さに対して3〜5%の塩をまぶし、毎日手で混ぜる。水が上がったら塩をまぶした野菜を漬ければいい
慣れないうちはひと手間に感じても、続けるうちに体調が上向いてくるのを感じるはず。
ストイックになりすぎず、できることから実践して、夏の体を底上げしていきましょう。
〈撮影/星 亘 取材・文/長谷川未緒〉
小鮒ちふみ(こぶな・ちふみ)
薬膳料理研究家。国際中医薬膳師。「台所養生共室」主宰。20代で進行性の胃がんを患い、心のあり方や食生活が体に影響を及ぼすことに気づく。養生法を学び、東日本大震災を機に農業の道へ。栃木・那珂川町の古民家で暮らし、夫と「こぶな農園」を運営し台所担当として農食一体を軸に養生法を伝えている。http://kobuna-farm.com
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです