(『天然生活』2024年8月号掲載)
都会の暮らしで酷暑を乗り切るための心がけ
都会の夏は、ますます厳しくなっています。猛暑日や熱帯夜だけでなく、私たちの体と季節とのギャップが大きくなっているからです。
東洋医学的に考えると、夏の不調の多くはこの「ズレ」が原因。逆に言うと、この「ズレ」が少なければ体調を崩しにくいのです。
私自身も季節の初めや急に気候が変わったときは不調になりがち。忘れている養生はないかと思い出しては、季節とのギャップを埋めて体調を整えています。
体と夏の「ズレ」を減らすには
体と夏が同調するにはどうすればよいでしょうか。それは「夏をしっかり感じること」。小さなもの、身近なもので構いません。熟れてはち切れんばかりのトマトや丸々と太ったスイカは、街中のスーパーでも感じられる「旬」です。
旬の食材を食べることで、体に季節を取り込むことができます。
鬱陶しい梅雨も、うんざりする真夏の暑さも、季節のめぐりと思えば、いとおしく感じられるはず。見落としがちな小さな夏を五感で感じることも、体内時計のリセットにつながります。

夏の養生で心がけたいこと
夏の養生で心がけたいのは、体を上手に夏仕様にシフトすること。暑さにより代謝が活発になることに、体がついていけるかが鍵となります。
水分と熱が活発に循環することで体温調節ができるので、体の水分をすべて入れ替えるつもりでしっかり汗をかき、よい水分補給を行えば、夏にしかできない体のデトックスが可能です。
体に「陽気」をためることも大切です。夏に体を冷やすと、冷え性や気分の落ち込みなど、冬に不調が多くなりがち。逆に夏を元気に過ごせれば、冬の不調が解消します。これを東洋医学では「冬病夏治(とうびょうかち)」と呼びます。
もうひとつ重要なのが、胃腸のケア。夏は暑いだけで体力が奪われ、それを助けるのがエネルギーの供給源である胃腸です。
胃腸が疲れれば、一気に夏の不調に陥ります。胃腸の調子を落とさず、元気に過ごすことができるだけで、夏の辛さの半分は解消したようなもの。とくに湿気の多い梅雨時からの養生が欠かせません。
夏は自然が非常にエネルギッシュですが、このエネルギーを味方につけて元気の源に変換できれば、もっと楽しく、もっと過ごしやすくなっていくはずなのです。
〈監修・文/瀬戸佳子(源保堂鍼灸院) イラスト/カトウミナエ〉
瀬戸佳子(せと・よしこ)
国際中医薬膳師、国際中医専門員。東京・青山の「源保堂鍼灸院」併設の薬戸金堂で、漢方相談を行う。雑誌やweb、セミナーの講演などでも幅広く活躍する。著書『お手軽気血ごはん』『季節の不調が必ずラク~になる本』『気血スープ 1週間で胃腸が必ずよみがえる』(すべて文化出版局)が発売中。
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※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです