(『天然生活』2024年3月号掲載)
若菜晃子さんの元気になれる“この8冊”
若菜さんが「元気になれる本」として紹介してくれたのは、こちらの8冊。

学生との対話

『学生との対話』(小林秀雄著 新潮文庫)
批評の神様と呼ばれる小林秀雄による熱心な講義と、学生との真摯極まる質疑応答を書籍化。「対話形式なので読みやすいです。確かな知識人による正しい考え方を吸収できる一冊」
自分の羽根

『自分の羽根』(庄野潤三著 講談社文芸文庫)
多摩丘陵に移り住んだ40代のころに綴られた、暮らしと文学をテーマにした90篇の随筆。「庄野潤三の文章は、独特のおかしみがあると同時に、本質を見据えて書かれているところが好き」
作家

『作家』(M.B.ゴフスタイン作、谷川俊太郎訳 G.C.PRESS)
ゴフスタインによって、“作家”とは何であるかが簡潔に語られる。「担当の編集者から贈られて。ここで書かれる“作家”像に納得させられ、ものを書く自分に改めて向き合う気持ちに」
ファウスト

『ファウスト』(ゲーテ作、相良守峯訳 岩波文庫)
学問の無力に絶望したファウストは、悪魔の助力を得て享楽の限りを尽くす。ゲーテが20代から着手し、最晩年まで書き綴った超大作。「迷ったとき、この中の一文に励まされています」
トルストイ民話集 人はなんで生きるか

『トルストイ民話集 人はなんで生きるか』(トルストイ著、中村白葉訳 岩波文庫)
民話の素朴な美しさのなかに、トルストイの人生観・国家観・道徳観、その全思想の深みがのぞく。「現代の私たちに本当に必要なこと、人間の良心、真実がここにあるように思います」
キッチンの窓から

『キッチンの窓から』(スーザン・ヒル文、アンジェラ・バレット絵、ウィルヘルム菊江訳 西村書店)
北ヨーロッパの人々の暮らしに溶け込んだ素朴な料理のつくり方を、美しい絵とともに紹介。「四季により変わっていく、キッチンの眺め。ページをめくるごとに、疲れがいやされていきます」
農場の少年

『農場の少年』(ローラ・インガルス・ワイルダー作、ガース・ウィリアムズ画、恩地三保子訳 福音館書店)
『大草原の小さな家』のローラ・インガルスの夫となるアルマンゾの少年時代を描いた作品。「情景がありありと浮かんできて、温かい。シリーズでは別巻的存在ですが、とても好きです」
トムテ

『トムテ』(リードベリ作、ウィーベリ絵、山内清子訳 偕成社)
家を守り幸せをもたらす北欧の小人トムテ。生の神秘を描く絵と詩が美しい。「眺めるだけでホッとできる、静かな絵本。日常に疲れることも多いなか、違う時間の流れを感じたいときに」
▼本を愛するあの人の“元気になれる本”はこちら
◆「本」を愛する方々による、読書の楽しみや喜びを改めて教えてくれる1冊◆
作家・角田光代さん、絵本作家・角野栄子さん、女優・中嶋朋子、作家・北杜夫さんなど、本を愛する方々の本棚を紹介。随筆家の山本ふみこさん、ミュージシャンの坂本美雨さんなど、様々な分野で活躍する方々の愛読書も掲載しています。書店のブックカバーや本の仕立て直し屋さん、ブックディレクターの幅允孝さんによる読書すごろくなど、いつもと違った角度から本を楽しめる1冊です。
〈イラスト/はまだなぎさ 取材・文/福山雅美〉
若菜晃子(わかな・あきこ)
編集者、文筆家。山と溪谷社にて『wandel』編集長、『山と溪谷』副編集長を経て、独立。山や自然、旅に関する執筆を行う。小冊子『mürren』編集・発行人。『岩波少年文庫のあゆみ』(岩波書店)など著書多数。旅の随筆集第一集『旅の断片』(アノニマ・スタジオ)にて、第5回斎藤茂太賞を受賞。その第三集『旅の彼方』が発売中。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです