金継ぎをお気軽に

今から8年ほど前に金継ぎをはじめました。金継ぎとは、うるしを使って割れたり欠けたりしたうつわを繕うこと。茶の湯で使われる碗にも見られる、昔から受け継がれてきた修理法です。
わたしはもともと、使うごとに味わい深くなっていく土もののうつわが大好き。お気に入りの食器店や旅先で、これぞといううつわをコツコツ集めるのが楽しみのひとつです。
うつわ好きとはいえ、わが家の食器棚は水屋のごくわずかなスペース。この場所に収まるだけ、と決めてあえて揃いにはせず、来客用と普段使い用も分別していません。取り分け皿もひとつひとつ違う作家さんのものを集めて、めいめいの個性を楽しんでいます。
そんな大切なうつわたちですが、家事分担を見直した結果数年前から夫が食器洗い担当となり、ときどき欠けさせてしまったり割ってしまったり。そんなときにはめげずに金継ぎです。
金継ぎをはじめた当初は、張り切って本漆での繕いにチャレンジしましたが、湿度の調整などが難しくてお手上げ。
今は食品衛生法をクリアした合成樹脂と、真鍮粉で繕う気軽な簡易金継でやりくりしています。
金継ぎすると電子レンジが使えないなどのデメリットもありますが、いちばんの醍醐味は偶然できたヒビや欠けがチャームポイントに変わること。

最初はうつわひとつ直すだけでひと苦労だったけれど、今では同時に数枚仕上げられるように。材料の混ぜ方や継ぎ目を滑らかにする方法など、回数を経るごとにだんだんとコツがわかってくる過程もまた楽しいもの
「継ぐ」といえば思い出すのが、長女がまだ小学生だったころ。私が手づくりした水玉模様のスカートを、ジャングルジムで遊んでいる途中に破ってしまった彼女。
お気に入りで毎日のようにはいていたので、さぞ凹むかと思いきや「この破れを生かしてかわいいデザインにできひんかな?」と、めげずに思案しはじめたのです。
「スリットにしてレースが覗いてたらかわいいかも!」なんて妄想を膨らませていた彼女。
転んでもただでは起きぬその様子に、なんだか頼もしさを感じた母だったのでした。
参考:金継ぎ暮らし https://kintsugikurashi.co.jp/
本記事は『「使い切る」ソーイングと暮らし』(著/美濃羽まゆみ・主婦と生活社)からの抜粋です。
美濃羽まゆみさんの「使い切る」暮らしのアイデアを掲載している新刊『「使い切る」ソーイングと暮らし』。お手軽金継ぎのほかにもコンポストや量り売り、子育てをわかちあうことについてなどのエッセイのほか、布の無駄を出さない服や小物のレシピなど、日々の暮らしを充実させるヒントが詰まっています。
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京都の町家に住む、手づくり暮らし研究家・美濃羽まゆみさんが提案する「布一枚を使い切る」服づくり。和服の無駄が出ない作りにヒントを得て考えたレシピはどれもおしゃれで実用的。また、小さな端ぎれが出た場合、それを使って作るアイテムも紹介。ソーイング以外では、収納、食材、庭造りなどの暮らしに「使い切る」精神を発揮。みかんの皮や茶殻を使い切るアイデアなどを伝授。
<撮影/新居明子 編集/鈴木理恵>

美濃羽まゆみ(みのわ・まゆみ)
1980年京都生まれ京都育ち。手づくり暮らし研究家。2008年からFU-KO basics.としてソーイング作品の製作と販売を行う。築100年の京町家で夫と長女、長男の4人と猫3匹と共に暮らす。「ものを作る。 幸せのかたちを作る」をテーマに、人付き合いも暮らしも循環するようなライフスタイルを提案している。『「めんどう」を楽しむ衣食住のレシピノート』(主婦と生活社)、ソーイング本『FU-KO basics. 着るたびに、うれしい服』(すべて日本ヴォーグ社)、『手ぬぐいでちくちく、暮らしの布小物』(家の光協会)など著書多数。
ブログ:FU-KOなまいにち。
インスタグラム:@minowa_mayumi
YouTube:@FUKOHandmade
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