• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。かわいいポーズをする猫の心理とは。

    絶対かわいいって分かってやってる!

    ある日、ふと目を向けると、5歳になる男の子「全」がリビングの真ん中で寝転がっていました。

    床にべっとりと寝そべっている……というよりは、少しひねりをくわえたような、まるでポーズをとるみたいな姿勢。

    画像: こちらがかわいいアピールの「全」

    こちらがかわいいアピールの「全」

    「それ、自分で“かわいい”って分かってやってるでしょ(笑)」

    思わず、そう声をかけたくなってしまうくらい、完璧な見せ方。両手を曲げて胸の前で「おいでおいで」の形にしたり、しっぽをくるんと巻きこんでみたり、どこかのモデル猫さながらなのです。

    暑い日なら、床に転がるのも分かります。だけど、今はエアコンのきいた夜。

    つまりこれは――完全な「アピール」。

    わが家イチの甘えん坊猫が見せるかわいさ

    全は我が家一の甘えん坊でヤキモチ妬き。他の子を撫でていると、すかさずやってきて「ぼくも!」と膝に飛び込んできます。

    けれど不思議とそれが全然いやじゃない。むしろ、ちょっと得意げな表情でこちらを見つめるそのまなざしが、たまらなくいとおしいのです。

    お腹を見せることは、猫にとって「急所をさらす」行為。それを躊躇なくするのは、「信頼」以外のなにものでもないのだと思います。

    画像: ずっとこのスタイルで待っている「全」

    ずっとこのスタイルで待っている「全」

    そして、全の場合はさらにプラスアルファが。

    「ぼくの気持ち、ちゃんと伝わってる?」

    「ちゃんと愛してくれてる?」

    そんな声が聞こえてくるようで、私はいつも「うん、分かってるで。世界一、かわいいよー」と、つい声に出してしまうのです。

    画像: 手をつないで離さない

    手をつないで離さない

    猫と気持ちが通じ合う話し方、接し方

    猫に言葉は通じないと思うでしょうか?

    そんなことはけっしてないと、きっとここを読んでおられる皆さんは、もうご存知ですよね。

    人間が想像するより、ずっと賢くて、愛情を伝えてくれる猫。

    こんなふうに猫がお腹を見せるポーズをしてくれたとき、もっと仲良くなるには私たちはどうすればいいでしょう?

    (1)ゆっくりと優しく声をかける

    猫は声のトーンに安心します。「かわいいねー」は最強の魔法。

    (2)急に触らない(特にお腹)

    お腹を見せていても触られたいとは限りません。まずは顔や首元をそっと撫でてあげましょう。

    (3)目を細めて見つめ返す

    猫語で「大好きだよ」「安心していいよ」の合図です。

    (4)その子専用の甘えタイムを作る

    やきもち妬きな子ほど、一対一の時間に安心をおぼえます。

    画像: 見てる? ちゃんと見てる?

    見てる? ちゃんと見てる?

    とはいえ、他の子へのフォローも大切。一匹をかわいがっているときは、多頭飼いなら、別の子へも気配りしていきたいですね。

    ・他の子が見ていたら、静かに離れたところでも名前を呼び、目を合わせる

    ・甘えん坊くんに付き合った後は、他の子にも必ず「フォロータイム」を

    ・取り合いになりそうなときには「平等であるふり」ではなく「順番制」を

    「かわいいポーズ」は猫からの心の告白。

    家族だけが見られる最高のいとおしい姿に感謝しつつ、私たちも「愛してるよ」の告白で、絆をもっと深めていきたいですね。

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    画像: 猫と気持ちが通じ合う話し方、接し方

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

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