絶対かわいいって分かってやってる!
ある日、ふと目を向けると、5歳になる男の子「全」がリビングの真ん中で寝転がっていました。
床にべっとりと寝そべっている……というよりは、少しひねりをくわえたような、まるでポーズをとるみたいな姿勢。

こちらがかわいいアピールの「全」
「それ、自分で“かわいい”って分かってやってるでしょ(笑)」
思わず、そう声をかけたくなってしまうくらい、完璧な見せ方。両手を曲げて胸の前で「おいでおいで」の形にしたり、しっぽをくるんと巻きこんでみたり、どこかのモデル猫さながらなのです。
暑い日なら、床に転がるのも分かります。だけど、今はエアコンのきいた夜。
つまりこれは――完全な「アピール」。
わが家イチの甘えん坊猫が見せるかわいさ
全は我が家一の甘えん坊でヤキモチ妬き。他の子を撫でていると、すかさずやってきて「ぼくも!」と膝に飛び込んできます。
けれど不思議とそれが全然いやじゃない。むしろ、ちょっと得意げな表情でこちらを見つめるそのまなざしが、たまらなくいとおしいのです。
お腹を見せることは、猫にとって「急所をさらす」行為。それを躊躇なくするのは、「信頼」以外のなにものでもないのだと思います。

ずっとこのスタイルで待っている「全」
そして、全の場合はさらにプラスアルファが。
「ぼくの気持ち、ちゃんと伝わってる?」
「ちゃんと愛してくれてる?」
そんな声が聞こえてくるようで、私はいつも「うん、分かってるで。世界一、かわいいよー」と、つい声に出してしまうのです。

手をつないで離さない
猫と気持ちが通じ合う話し方、接し方
猫に言葉は通じないと思うでしょうか?
そんなことはけっしてないと、きっとここを読んでおられる皆さんは、もうご存知ですよね。
人間が想像するより、ずっと賢くて、愛情を伝えてくれる猫。
こんなふうに猫がお腹を見せるポーズをしてくれたとき、もっと仲良くなるには私たちはどうすればいいでしょう?
(1)ゆっくりと優しく声をかける
猫は声のトーンに安心します。「かわいいねー」は最強の魔法。
(2)急に触らない(特にお腹)
お腹を見せていても触られたいとは限りません。まずは顔や首元をそっと撫でてあげましょう。
(3)目を細めて見つめ返す
猫語で「大好きだよ」「安心していいよ」の合図です。
(4)その子専用の甘えタイムを作る
やきもち妬きな子ほど、一対一の時間に安心をおぼえます。

見てる? ちゃんと見てる?
とはいえ、他の子へのフォローも大切。一匹をかわいがっているときは、多頭飼いなら、別の子へも気配りしていきたいですね。
・他の子が見ていたら、静かに離れたところでも名前を呼び、目を合わせる
・甘えん坊くんに付き合った後は、他の子にも必ず「フォロータイム」を
・取り合いになりそうなときには「平等であるふり」ではなく「順番制」を
「かわいいポーズ」は猫からの心の告白。
家族だけが見られる最高のいとおしい姿に感謝しつつ、私たちも「愛してるよ」の告白で、絆をもっと深めていきたいですね。
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咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」