(『天然生活』2024年9月号掲載)
心も体も心地よいものに触れて

地下水の冷鉱泉を生活用水に。以前の所有者が掘りあてた水脈から汲み上げている。「日によって風味が微妙に違う。水が生きていると感じます」
2023年の冬から、緑豊かな里山で始まった居相家の新しい生活。
地下1,000メートル以上の水脈から地下水を汲み上げて生活に使い、敷地の樹木を薪にしてお風呂を沸かします。
仮住まいで薪のお風呂の心地よさを味わったという大輝さんは、「体の芯から温まって一番の薬になる気がする」とうれしそう。

瓦を配した浴室も、直径1メートルの鉄釡を備えた浴槽も手づくり。「子どもたちがさっとシャワーを浴びられるように」ガスにも対応

浴室にはススキをあしらった古い扉を設えて。「門戸でしたが透け感が気に入って」。取っ手などのパーツも大輝さんの蒐集品
植物とともに暮らす
一方「植物を育てることが何よりの喜び」という愛さんは庭を担当。
食卓は庭の野菜で彩られますが、以前の自給自足に近い生活とは違い、野菜も土の性質に合うものだけを「ゆるやかに」育てています。

草花と戯れるように、庭の手入れを楽しむ愛さん。「植物の元気な姿を見て、日々喜びを感じています」。休日は家族で山道を散歩しながら、植物探索をしているそう。
何よりここで暮らし始めたことで、「心が大きくなったみたい」と口をそろえるふたり。
「住まいから広がる景色がとても広いので、意識も広がったのかな」と愛さん。

庭の植物を活けるのも、愛さんの楽しみ。「野趣に富んだ草花が好きですね。毎日庭で自由に遊ばせてもらって感謝です」
「朝を迎え、昼を過ごし、夕暮れを見て、夜の静けさに身をおいて。
そういうことを繰り返していたら、ここにしかない心地よさを五感で感じられるようになりました。
思っていたより何十倍も幸せです」

植物で布に色づけをする居相家ならではの遊び。「子どもたちと楽しんでいます」

クロモジのほのかな香りが広がる、愛さんお手製のババロア
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〈撮影/辻本しんこ 取材・文/山形恭子〉
居相大輝(いあい・たいき)
1991年生まれ、京都府福知山市で育つ。幼いころから服への興味があり、10代でミシンを購入。独学で服づくりを学び、2015年にファッションブランド「iai」を立ち上げる。暮らしの身のまわりにある草木根皮での染色、風土や土地の風景が生きる手仕事の衣服を日々制作。2023年12月より兵庫県朝来市へ移住。妻の愛さんとふたりの娘と暮らす。
インスタグラム:@_____i_a_i/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです