(『天然生活』2024年10月号掲載)
子育てがひと息つき、ようやく自分と向き合えるように
自分のためだけに、時間を使う。それはなんと贅沢なことかと大草さんは実感しています。
ファッションエディターとして常に一線に立ち、同時に3人の子どもたちの母としての役割にも手を抜かなかったこれまでの日々。
「下の娘が中学生になり、子育てにようやくひと息ついたところです。これまでは、帰宅しても眠りにつくまでは、常に頭も体もフル回転でしたけれど、やっとじっくりと自分の気持ちと体に向き合えるようになりました」

マッサージは通常3分ほど。「短時間でも毎日続けることに意味があります。こりや疲れは浅いうちにケア」
疲れる前にケア。自分へのいたわりの言葉も大切に
体力には自信あり、という大草さん。それゆえにギリギリまで無理が利いてしまうから、心がけていることがあります。
「疲れは、ためない。日々生活していれば、意識していなくても何かしらの負荷はかかっているはず。ゆっくり湯船に浸かることやマッサージ、好きなワインを飲むことで、その日に受けた負担が浅いうちに取り切るようにしています。

「日中は多くの刺激を受けているので、気持ちを鎮め、浄化する意味でもバスソルトは欠かせません」と大草さん
メンタルもフィジカルも、『疲れたな』と感じないうちにケアすることが大切だと感じているんです」
さらに大切なのは、言葉。「自分を、ちゃんとねぎらうんです。『今日も、がんばったよね』。口に出して、それを耳で受ける。頭で思うだけより、ずっとプラスの効果があると信じています」

最近はもっぱらロゼを愛飲。「ラベルのかわいさもポイント」
無限に思える夜時間は、自分と静かに向き合って
夜時間に心がけるのは、情報を追わないこと。日中、十二分に受けているそれらをシャットアウトすることで、オンオフの切り替えがよりはっきりするといいます。
「眠る前にSNSをチェックしたり、動画を観たりしなくなりました。夜は、流れる情報を追うよりも、静かに立ち止まって言葉と向き合う時間に費やすほうが向いているように思います。
言い換えればそれは、液晶を通さない情報。本を読むこともよいですが、私は心の内から生まれる言葉を受け止めながら、文章を綴ることが好き」
書くうちに、意外な心の動きに気づく。誰かの親切に、あらためて感謝の念を抱く。

だれかに気持ちを伝えることもあれば、心に浮かぶアイデアを書き留めることも
ときにはお気に入りの椅子に腰掛け、ただ景色を眺める。外の世界のことはしばし忘れ、ただ自分と向き合うだけの時間もまた、夜ならではのもの。
取材中何度か、大草さんは「夜は無限ですから」と口にしました。それは自分の心持ち次第で、どこまでも楽しみが広がっていくような、自由な感覚。
今日の自分へのいたわりが、明日の自分の背中を押す。
日々を常に新しい気持ちでスタートするためには、夜のルーティーンは欠かせないのです。
〈撮影/柳原久子 構成・文/福山雅美〉
大草直子(おおくさ・なおこ)
大学卒業後、出版社にて女性ファッション誌の編集に携わったのち、独立。ファッション誌、新聞、カタログを中心にエディトリアルやスタイリングを手がけ、イベント出演や著書の執筆など多岐にわたって活躍。2019年にはメディア「AMARC」を立ち上げ、ファッション、ビューティー、生き方のレシピを毎日発信。
https://amarclife.com/
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです
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天然生活2025年10月号では「整う夜の時間割」の特集をしています。夏の疲れをいやし、心と体を整える夜時間は明日の元気をつくる大切なひととき。ぜひあわせてお楽しみいただけましたら幸いです。