(『天然生活』2020年12月号掲載)
自由な心をもつ大切さを思い出させてくれる本
今回、平澤まりこさんが挙げてくれたのは、ふと、心を解放したくなるときに読みたくなる本。
「あわただしい日々が続くと、心が少し波立ってしまう。そんなときに、この本たちを手に取ると、自分の原点にすっと戻れる気がするんです」
『ひとりよがりのものさし』は、「自由な眼をもちなさい」と繰り返し平澤さんに教えてくれます。
「著者の坂田和實さんとは30代前半に知り合い、お会いするたびに『自分が好きなものを堂々と好きといっていいんだ』と気づかせてくださって。この本をめくるたびに、そのことがよみがえります」

『ひとりよがりのものさし』(坂田和實著 新潮社)
『大人の女が美しい』は、平澤さんが学んだセツ・モードセミナーの創始者、長沢節の著書。“節先生”を思い出しながら読む1冊です。
「印象に残っているのは孤独について書かれた一節。孤独を知っているからこそ人は他人を愛そうとするし、仕事を通じて世界とつながることができるんだ、と」
自分だけの軸をしっかりもち、自由な心を忘れない。それは平澤さんが「生きていくうえで不可欠」と語ることであり、どの本からも受け取っているメッセージです。
「創作をしているとき、他人からの評価を気にしてしまうと、作品にまったく力がなくなってしまうんです。自分の心が欲しているものに真剣に向き合い、それをしっかり作品に込めると、見てくださる方の心にも届く。そんな経験を重ねるうち、自分の直感を大事にしようと思うように」
ときには時間に追われるあまり、直感を見失ってしまいそうになります。
そんなとき、手元にある本が平澤さんをそっと励ましてくれるのです。

「好きな本を手に取りめくっていると、心が落ち着いてきます」。読書以外に、毎朝の愛犬との散歩も、心身を整えるための大切な習慣にしている
平澤さんの読書のおやつ
アテスウェイの「タルトタタン」

冬はタルトタタンが食べたくなるという平澤さん。
人気パティスリーのタルトタタンは、フレッシュな味わいのりんごと生クリーム、サクサクのクランブルのバランスが絶妙。
「冬の読書ならではの贅沢です」
〈撮影/山川修一 取材・文/嶌 陽子〉
平澤まりこ(ひらさわ・まりこ)
イラストレーター・版画家として雑誌や広告、装画を手がけるほか、エッセイも執筆。『旅とデザート、ときどきおやつ』(河出書房新社)など著書多数。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです