• 夜の帳が下りたらスローダウン。ラジオパーソナリティー・クリス智子さんの、心と体をいやす夜の過ごし方を拝見します。日暮れとともにキャンドルを灯し、自分の心を自由にさせる時間を。
    (『天然生活』2024年10月号掲載)

    揺らぎの時間に身をおき、心を自由にさせておく

    2024年春、クリスさんの生活には大きな変化がありました。長年続けてきたラジオの帯番組の生放送から離れたのです。

    この7年は、住まいのある鎌倉から都内のスタジオまで4時間かけて往復、3時間の生放送を週に4日という日々でしたが、いまは週に一度の収録に。

    「よく『夜更かしするようになりましたか?』と尋ねられますが、生活のリズムは変わりません。収録ですが、人にじっくり話を伺う番組なのでインプットの時間は欠かせないし、新しいアトリエを構えてみずから発信することも増えていくので、やらなくてはいけないことも実は多くて」

    暮らしも存分に楽しみたいクリスさん。

    料理や掃除、子どもの世話といった家事に加え、季節ごとに庭仕事や畑仕事も押し寄せてきます。

    相変わらずタスクに追われる日々ですが、それでも夜はほっとひと息。

    日が暮れてキャンドルを灯したら、「自分に自由を与える時間」が始まります。

    画像: 最小限の灯りの中、豊かな時間を味わって。この日は誕生日に購入したマティスの画集を

    最小限の灯りの中、豊かな時間を味わって。この日は誕生日に購入したマティスの画集を

    「均一に照らす電気の照明と違い、キャンドルの光は見なくていいものを隠してくれて、空間にも奥行きが生まれます。昼間はどうしても思考優位、『意識』によって活動していますが、夜は心身をゆるめることで、『無意識』の部分が育まれていくように思います」

    キャンドルの炎の揺れや、映画や絵画を観たとき、本を読んだときの感情の揺らめき。

    クリスさんにとって夜は、そういう「揺らぎ」に身をおく時間です。

    少しの工夫や考え方で、時間の流れ方は変わる

    自分の心をできるだけ柔らかく自由にさせて、「いま、これをしたい」と思うことをする。

    画集のページをめくりながら、じっくりと画家の世界に浸る。アーティストの自伝を読み、彼女がどう自分の人生と向き合ったかを考える。

    そんなふうに吸収したものは、しっかり心の奥に根を張ります。

    画像: 週末には、感覚をひらく本を読んで。階段途中にある中2階はお気に入りの読書スペース

    週末には、感覚をひらく本を読んで。階段途中にある中2階はお気に入りの読書スペース

    あるときそれがふっと意識に上がり、行動を起こすとき、ものごとを判断するときの、力になってくれるそうです。

    「夜は『何をするか』よりも、『どういう質の時間に身をおくか』を大切にしているように思います。時計の針で刻まれる時間と、キャンドルを眺めながら過ぎる時間は、進み方が違うと感じませんか? ほんの少しの心がけで、時間の『質』は変わります。夜まで時計を気にしていたら、もったいなくて。自分の感覚を研ぎ澄まし、その感覚を軸にする。それが私にとっての豊かな『夜時間』なのだと思います」

    画像: 夕食後は「締め切りがない料理」を。かたまり肉に塩をまぶしてじっくり煮込み、塩豚に

    夕食後は「締め切りがない料理」を。かたまり肉に塩をまぶしてじっくり煮込み、塩豚に



    〈撮影/大森忠明 取材・文/田中のり子〉

    クリス智子(くりす・ともこ)
    大学卒業と同時に、ラジオパーソナリティーの仕事を開始。イベント出演や朗読、エッセイ執筆など幅広く活躍。J-WAVE「TALK TO NEIGHBORS」(月~木曜13:00~13:30)のナビゲーターを務める。日本キャンドル協会理事。2024年5月より鎌倉の古民家を改装したアトリエ「Cafune(カフネ)」から、暮らしやアートに関する発信を行っている。

    ※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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