台風や豪雨の日の猫たち
天候がころころ変わり突然の雨が降る季節。外はゴウゴウと風が唸り、シャッターにバシンと何かが当たります。
そんなとき、猫たちは耳をぴくぴく、尻尾をぱたぱた……落ち着かない様子で部屋をうろうろします。こちらもつられて、なんだか胸がざわざわ。
でも、夫はといえば「うちは安全だから大丈夫だよ」とのんびりした声。
その姿を見ていると、あら不思議。猫たちまで少し安心したように、近くに寄ってきます。やっぱり、人間の空気を敏感に読み取るんですね。

ロフトの上は安心する場所
猫にとっても私にとっても夫は「心の避難所」
思えば、私はこれまで何度も心が嵐に巻き込まれました。心の病に振り回され、泣き叫んでどうしようもない夜にも、夫はただ黙って抱きしめてくれました。特別なことを言うでもなく、ただそこにいてくれたおかげで、私は少しずつ安定を取り戻せたのです。
夫はおおらかで頼りになる反面、少し鈍感で、腹が立つこともあります。けれど、その鈍感さがあるからこそ、私が不安や恐れに押し流されそうなときでも、びくともしない支柱のようにそばにいてくれる。猫たちが夫の声に安心するように、私にとっても彼は「心の避難所」なのだと思います。
暴風雨の夜に猫と安心して過ごす方法
暴風雨の夜、猫と人間が一緒に不安を分け合い、そして安心を分け合う。
そんなふうにいるために、家族は何ができるでしょうか?
・人間の落ち着きが一番の安心材料
猫は人の声や表情を敏感に読みます。大丈夫だよ、とやさしく声をかけるだけで安心感につながります。
・安心できる隠れ場所を用意
押し入れ、布団の中、ダンボール箱やケージなど。猫が自分から選べる「避難所」をいくつか用意すると落ち着きます。

袋の中が落ち着く「全」
・強い音をやわらげる工夫
カーテンやシャッターを閉める、テレビやラジオを小さくつけるなど、外の音をやわらげると安心度アップ。

シャッターとカーテンを閉めると安心して眠れる
・触りすぎない
不安なときに無理に抱っこすると余計にストレスになることも。猫が寄ってきたらそっと撫でるくらいでOK。
・停電への備えも忘れずに
懐中電灯やモバイルバッテリーを用意して、急に暗くなっても慌てないようにしましょう。

いつものキャットタワーも安心する場所
暴風雨の夜はドキドキするけれど、猫たちと夫と一緒に「ちょっとした避難所」をつくることで、不安もやわらぎます。
気づけばみんなで寄り添って、外の嵐とは別世界のあたたかな空気が流れているのです。

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咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」