介護歴13年のプロである現役の介護職員・のぶさんに学ぶ、“介護がラクになる”のコツ。介護する側の負担を軽減しながら、家族も本人も快適に暮らせるアイデアを紹介します。今回は「便利な介護グッズ」について。いままさに介護に向き合っている方やこれから介護を始める方への、ヒントとアドバイスをお届けします。
(『読むだけで介護がラクになる本』より)
使い捨て手袋、介護服、スライディングボード…
こうしたことは在宅介護でも導入することが可能だと思います。オムツ交換用の手袋はホームセンターなどで購入できますし、いらなくなったタオルを切ってストックしておくことで清拭用タオルとして使えます。
最近は介護服も多く出ています。前開きかつ、マジックテープでとめるタイプのパジャマや下着はおすすめです。
たとえば、ご自分での立ち上がりが難しい方で、ベッドから車いすに移乗する場面。ズボンの後ろをつかんで、グイッと引っ張る介助をするのを見かけることがあります。
この方法はご本人にとって、とても不快です。ズボンやパンツがギュッと食い込んでしまい、痛いだけでなく恥ずかしい思いをさせることもあります。さらに、ズボンが破けてしまうリスクもあるので、あまりおすすめできません。
こういった状況を改善するのに役立つのが「移乗用ベルト」です。
腰回りに巻き付ける、太いベルトのような道具です。ズボンの後ろを引っ張るかわりに、力士のまわしをつかむような感じで、ベルトの持ち手の部分をつかみます。力を入れて無理に引っ張り上げなくても、しっかりサポートできます。
ご本人の不快感もなくなり、お互いにとって負担が軽くなります。
さらに便利なのが「スライディングボード」という道具です。これは、ベッドと車いすの間に板状のボードを差し込んで、その上をスライドするように移動していただくものです。

スライディングボード
一見すると使い方が少し難しそうに思えるかもしれませんが、慣れてしまえば簡単で、何より腰にかかる負担が大幅に軽減されます。とくに、日中に何度もベッドと車いすを行き来する方にはぴったりです。
たとえば食事やトイレ、リハビリのたびに移乗が必要な場合、このスライディングボードを使うだけで、介護する側もされる側も安心してスムーズに移動できます。
今は便利な介護用具もたくさん作られています。こうした便利グッズを上手に取り入れることで、ご家族の負担を減らし、ご本人がより快適に生活できる環境を整えることができます。
介護は無理をせず、頼れるものにしっかり頼ることが大切です。
本記事は『読むだけで介護がラクになる本』(すばる舎)からの抜粋です
〈イラスト/北野有〉
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介護はもっとラクをしていい
介護をしている方。がんばりすぎていませんか。特別養護老人ホームの生活相談員として日々出会う、在宅介護を担うご家族。みなさん本当にがんばっています。でも、自分を犠牲にして無理をするのは絶対にだめ!自分自身を大切に。もっとラクをしていいのです。毎日の介護の負担をぐっと減らすスキルがあります。支えになる介護サービスがたくさん揃っています。老人ホーム入所を選ぶのは決して悪いことではありません――。
Xで介護のコツを発信し、フォロワー3.7万人。同業者だけでなく、家族介護をする人たちからも支持されるのぶさん。介護現場での心温まるエピソードもまじえながら、「読むだけで心がラクになる」メッセージを伝えます。思いやりあふれる励ましの言葉に、感謝の声続々。もちろん実践的なアドバイスも満載。
のぶ
新潟県在住。介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員。大学在学中、父の介護を経験したことをきっかけに、介護の世界を志す。大学を卒業後、特別養護老人ホームに就職。初はショートステイの介護職員として働く。現在も現場に出る日々が続くが、介護職員としても管理者としても利用者さんを幸せにする介護を追求。2021年からX(旧Twitter)で、「介護現場のリアル」や「ちょっと肩の荷がおりる」つぶやきを発信している。「ちょっと肩の荷がおりる」つぶやきを発信している。介護士や家族介護をする人の共感を集め、フォロワー3.8万人。3児の父。
X:@nobu_fukushi