介護歴13年のプロである現役の介護職員・のぶさんに学ぶ、“介護がラクになる”のコツ。介護する側の負担を軽減しながら、家族も本人も快適に暮らせるアイデアを紹介します。今回は無理に力を入れずに「ベッド上で体を横向きにする」介護術について。いままさに介護に向き合っている方やこれから介護を始める方への、ヒントとアドバイスをお届けします。
(『読むだけで介護がラクになる本』より)
「力わざ」ではなく、てこの原理や重心移動で
在宅介護の場面では、「力わざ」で無理をしてしまっているご家族の姿を多く見かけます。
たとえば、「立ち上がってもらえない」と悩んで無理やり抱えたり、「オムツ交換がうまくいかない」と試行錯誤の末に疲弊してしまったり……。
腰や背中、肩を痛めてしまう方も少なくありません。
ですが、本来の介護技術というのは、力まかせのものではありません。「体のしくみ」を味方につけることで、ぐっと負担を減らすことができます。
「ボディメカニクス」という技術です。てこの原理や重心移動などを使います。ぼくたち介護職は専門の学校や現場で学んできています。
YouTubeの解説動画や自治体が開催する介護講座など、介護職の方でなくても手軽に学べる機会はたくさんあります。すべてを専門家のように学ぶ必要はありません。ほんの少しの技術や知識を身につけるだけで、介護が驚くほどラクになるのです。
ここでは、そのなかでもとくに「これを知っているといないとでは、日々の介護の負担が段違い」という技術を、ピンポイントでご紹介したいと思います。ちょっとしたことなのですが、初めて知ったときは魔法のように思うかもしれません。
ベッドで体を横向きに…てこの原理を使う
オムツ交換や着替え、体の清拭など、ベッド上で「横向きにする」動作はとても多く登場します。これも、コツを知っているかどうかで、かかる負担がまったく違ってきます。
基本は以下のような手順です。
●膝を立てて曲げる(足を小さくまとめる)
●両腕を胸の上で軽く組む(体全体をコンパクトにする)
この状態で、肩と腰にそっと手を添えて、「てこの原理」を使って回すように動かすと、驚くほどスムーズに体を横に向けることができます。
もちろん、無理な力は必要ありません。体を小さくまとめることで、動かしやすさがぐっと変わるのです。
体が重い方でも、この方法なら介護者ひとりで安全に体位変換が可能になることも多くあります。
ベッド上で体を横向きにするには

腕を立てて腕を前に組む
本記事は『読むだけで介護がラクになる本』(すばる舎)からの抜粋です
〈イラスト/北野有〉
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介護はもっとラクをしていい
介護をしている方。がんばりすぎていませんか。特別養護老人ホームの生活相談員として日々出会う、在宅介護を担うご家族。みなさん本当にがんばっています。でも、自分を犠牲にして無理をするのは絶対にだめ!自分自身を大切に。もっとラクをしていいのです。毎日の介護の負担をぐっと減らすスキルがあります。支えになる介護サービスがたくさん揃っています。老人ホーム入所を選ぶのは決して悪いことではありません――。
Xで介護のコツを発信し、フォロワー3.7万人。同業者だけでなく、家族介護をする人たちからも支持されるのぶさん。介護現場での心温まるエピソードもまじえながら、「読むだけで心がラクになる」メッセージを伝えます。思いやりあふれる励ましの言葉に、感謝の声続々。もちろん実践的なアドバイスも満載。
のぶ
新潟県在住。介護福祉士・社会福祉士・介護支援専門員。大学在学中、父の介護を経験したことをきっかけに、介護の世界を志す。大学を卒業後、特別養護老人ホームに就職。初はショートステイの介護職員として働く。現在も現場に出る日々が続くが、介護職員としても管理者としても利用者さんを幸せにする介護を追求。2021年からX(旧Twitter)で、「介護現場のリアル」や「ちょっと肩の荷がおりる」つぶやきを発信している。「ちょっと肩の荷がおりる」つぶやきを発信している。介護士や家族介護をする人の共感を集め、フォロワー3.8万人。3児の父。
X:@nobu_fukushi