• 日常を少し離れ、心に風を吹き込んでくれる本。エッセイストの柳沢小実さんに、読書の楽しみと、読書に欠かせないおやつを伺いました。
    (『天然生活』2023年9月号掲載)

    価値観をゆさぶられる出合いをもとめて

    「実際に現地を訪れたときにも感じるんですが、この本を読むとアジアのほかの国は日本より人間関係が濃いなあと思います」

    そういいながら見せてくれたのは、シンガポールを舞台にした小説『クレイジー・リッチ・アジアンズ』。

    アジアの文化に夢中で、『絶縁』も前から好きだったタイ文学翻訳家の名前を見つけて手にとったという、アジアの作家たちによる連作短編小説集です。

    画像: 『クレイジー・リッチ・アジアンズ』ケビン・クワン著/竹書房

    『クレイジー・リッチ・アジアンズ』ケビン・クワン著/竹書房

    画像: 『絶縁』村田沙耶香、チョン・セランほか・著、福冨 渉ほか・訳/小学館

    『絶縁』村田沙耶香、チョン・セランほか・著、福冨 渉ほか・訳/小学館

    ふだんから国内より海外の小説を読むことが多いという柳沢さん。その理由はいったい何なのでしょう?

    「もちろん暮らしにまつわる日本のエッセイは10代のころから変わらずに好きなんですが、小説に関していえば、なるべく自分の日常から遠い世界に触れたいという欲求があって。自分とは違う場所にいる人の考え方や視点を知って、価値観を壊されたいんです」

    描かれている世界はもちろんのこと、構成や文章に心揺さぶられることも。どちらにせよ、読書には刺激を求めるタイプだといい切ります。そこには変化の早い時代において、思考を柔軟にしていたいという思いもありました。

    「話が通じる相手とだけコミュニケーションをとったり、心地いいものだけを目にしたりしていると、だんだん視野が狭くなりそうですよね。私はふだん、ひとりで家にこもって仕事をしているので、ともすればひとりよがりになりやすい気がしていて。本を読んで『世界は広いな』『こういう考え方の人もいるんだ』など、頭をガツンと殴られるような感覚を味わうことが、自分を更新していくための一番の手段だと思っているんです」

    画像: リビングにあるカール・ハンセン&サン社製のゆったりしたソファが読書の定位置。「夜、家族が寝たあとに読むことも多いです」

    リビングにあるカール・ハンセン&サン社製のゆったりしたソファが読書の定位置。「夜、家族が寝たあとに読むことも多いです」

    柳沢さんの読書に欠かせない“おやつ”

    マヨルカの「ポルボロン」

    画像: 柳沢さんの読書に欠かせない“おやつ”

    ひとつずつ紙に包まれたスペインの伝統的焼き菓子。義理の姉に贈られて以来、大のお気に入り。

    「ほろほろとした食感に感激しました。焼き菓子には目がないのですが、これはかなり高レベル。コーヒーにもよく合います」



    〈撮影/星 亘 取材・文/嶌 陽子〉

    柳沢小実(やなぎさわ・このみ)
    エッセイスト。日本大学芸術学部写真学科卒業。衣・食・住・旅・台湾にまつわる著書は30冊以上に及ぶ。著書に『私らしい暮らしとお金の整え方』(主婦の友社)、『大人のゆったり旅』(大和書房)など。最近はアジアのドラマや音楽、文学などに夢中。整理収納アドバイザー1級の資格も持つ。

    ※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



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