(『天然生活』2024年12月号掲載)
エネルギーを蓄えて、新しい季節に備える
「植物は冬に力を蓄え、春に芽吹いて夏に盛りを迎え、秋に実りを得ます。同じように人間も、冬は次の春からまた元気に活動するために、心身に滋養を与える過ごし方がおすすめです」
と語るのは、薬膳料理研究家の小鮒ちふみさんです。

体を温める冬の定番料理「きのこと手羽先の養生鍋」を盛りつける小鮒さん
冬野菜をたっぷりいただいて栄養を得たり、きれいな景色を見て心に潤いを与えたり。
みんなでにぎやかに過ごすよりも、静かにゆっくり、春や夏を100%とするならば、冬は70%程度の活動量でエネルギーの消費を抑えつつ、心身ともにチャージできるようなことをします。
「とはいえ予期せぬことが起こるのが人生ですから、引っ越しをしたり、子どもが受験生だったり、家族が入院したり、ライフステージによっては冬にエネルギーを使いすぎてしまうこともあると思います。春に大きく体調を崩したり、夏にひどく夏バテしてしまったりしないよう、エネルギータンクに余力をつくるように、しっかり養生してほしいと思います」
冬の体の養生法としては、冷やさないようにしながらなるべく体を動かすこと。夏の体は心拍が速くエネルギーが外に向かいますが、冬の体は心拍もゆっくりで貯蔵向き。
同じものを食べても太りやすいですし、動物たちが冬眠するように人の体も代謝が落ちるため、代謝を下げすぎないことが大切なのです。
「ジム通いなどをしなくても、歩くだけで十分です。できれば朝、難しければ日の出ているうちに散歩してみてください。歩く前に足首を回してあげると、体の土台がしっかりして、膝痛や腰痛などの防止にもなりますよ」
冬の心がけ3つ
⚫︎ 体を冷やさないように体を動かす
⚫︎ 湯たんぽなどで外側から温める
⚫︎ 根菜などの冬野菜で内側から温める
できるだけ歩く

ごはんづくりに使う野菜を採りに畑へ行きがてら、長めに近所を歩いて回るのが小鮒さんの日課
お風呂を沸かしてかきまぜないと、上が温かく下が冷たいように、体も動かさないと、冷たい血液が下半身にたまってしまうのだとか。
血流を促し、めぐりを良くするために、日が出ているうちに毎日30分以上歩いています。

歩く前に足首回しを行う。内回し、外回しを50回ずつ、膝を動かさず、自力で回すのがコツ
「冬は気持ちが落ち込み、鬱々としやすいですが、日光を浴びながら歩くことで、気分も晴れますよ」
長く眠る

できれば22時台には寝るといい。そのためには19時までに食事をすませる
冬は植物が枯れ、虫や動物たちが冬眠するように、人間も活動を抑えて長く眠るようにすることが、自然の摂理にかなった養生法になるそう。
「昼は短く夜が長い冬は、そのリズムに合わせて少し早めに寝て、ゆっくり起きる、早寝・遅起きをします。長く眠ることで目に見えないエネルギーをため、活動が始まる春に備えましょう」

お香を焚くのが就寝前のルーティン。自然の音を聞いたり、ストレッチをしたり、眠りやすい環境を整えて
<撮影/千葉亜津子 取材・文/嶌 陽子>
小鮒ちふみ(こぶな・ちふみ)
台所養生共室主宰。国際中医薬膳師・医学気功整体師。20代で進行性の胃がんを経て、心のあり方や食生活が体に及ぼす影響に気づき、養生法を学び実践。東日本大震災を機に農業の道へ。小鮒農園の台所担当として農食一体を軸に、自治体向け産前産後養生事業やメディアへのレシピ提供、風土と私たちの命になじむ養生法を伝えている。
※記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです




