• 生きづらさを抱えながら、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていた咲セリさん。不治の病を抱える1匹の猫と出会い、その人生が少しずつ、変化していきます。生きづらい世界のなかで、猫が教えてくれたこと。猫と人がともに支えあって生きる、ひとつの物語が始まります。猫の運動不足のお悩みについて。

    冬になると一日寝ている猫。でも運動させたい!

    朝は震えながら目が覚めるようになりましたね。

    冬の入り口が近づくと、猫たちが少しずつ動かなくなります。うちの子たちも、お気に入りの2階のベッドで丸くなり、日中はほとんど寝て過ごすこともしばしば。

    食べるために狩りをする必要のない家猫は、どうしても運動不足になりがちです。

    だから我が家では、寒くなってくると積極的に遊びの時間を作るようにしています。

    遊びの時間は、やっぱり夜

    遊ぶのは、みんなが元気を取り戻す夜。

    ねこじゃらしをしまってある玄関の扉を開けたとたん、どこにいても察して駆けてくるのが不思議です。

    2階から小さな足音がトトトと降りてきて、リビングの空気が一気ににぎやかになるのです。

    最初に飛び出してくるのは、まだ若い2歳の「幸ズ(『幸』と書いて、コウ・ユキ・サチ)」。力任せに跳びついて、周りをびっくりさせます。

    生まれてすぐに保護されたため外の世界を知らないせいか、おもちゃが世界一楽しいらしく、そのはしゃぐ姿を見るだけでこちらも笑顔になります。

    画像: 猫じゃらしを狙う、キラキラの瞳

    猫じゃらしを狙う、キラキラの瞳

    続いて6歳の全(ぜん)と一(いつ)。この子たちは2か月ほど外で過ごした経験があり、ねこじゃらしを狙うときの目がまるでハンターのよう。

    「ウカカカ」と喉を鳴らしながら、まるで狩りの練習をしているみたいです。

    そして、16歳になるウン。ふだんは穏やかでお昼寝が好きな年長さんですが、この時間ばかりは別。瞳を輝かせ、家中を軽やかに走り回ります。

    それもなぜかおもちゃに飛びつくのではなく、動くおもちゃの周りを一直線にダッシュするのです(笑)。

    その姿は若いころの面影そのままで、胸の奥があたたかくなります。

    本能が喜ぶ遊び方のコツ

    狩りごっこは猫にとってただの遊びではなく、本能がよろこぶ大切なひととき。体だけでなく、心まで活性化していくようです。

    それを見守る私たちも、いつのまにか一緒に元気をもらっています。

    そんなふうに我が家がしている「家猫が喜ぶ遊び方のコツ」をお伝えできればと思います。

    画像: 大ジャンプ!

    大ジャンプ!

    ・おもちゃは“獲物”みたいに逃がすように動かす
    おもちゃをただやみくもに振るのではなく、生き物のような動きを。しばらく床にじっとさせたまま、猫たちが飛びついてきた瞬間に鳥が羽ばたく感じで動かしたりと変化をつけます。

    ・短い時間を何回かに分けて遊ぶ
    あまり長時間では猫も疲れてしまうので、1回の遊びを少なめに、生活の中に組み込むのがポイントです。

    ・最後はしっかり“捕まえさせて”達成感を
    猫たちは体が疲れていても「いつまでも」遊んでいたい子どものようです。

    一区切りをつけるためにも、ちゃんと「捕まえた!」という喜びを与えるために、最後はゆっくりクールダウンを。

    画像: 最後は捕まえてフィニッシュ

    最後は捕まえてフィニッシュ

    ・段差や家具を使って上下運動を取り入れる
    わざとソファの上にねこじゃらしを乗せたりして、まるで生き物のように動かすと、ワクワクが増すようです。

    ・遊びのあとは、ゆっくり撫でて心を落ち着ける
    「もっともっと!」と気持ちが高ぶっているため、「もう終わりだよ」の合図として、一緒にリラックスタイムを過ごします。

    画像: クールダウンのなでなでタイム

    クールダウンのなでなでタイム

    ・おもちゃは使い終わったら、必ず片づける
    おもちゃを出しておくと、猫がひとりで遊び、事故につながる危険性が。特に飲みこめるくらいの小さなおもちゃ(ネズミなど)や、紐や棒などがついたものは注意。しっかり手の届かない場所にしまっておきましょう。

    運動後は満足し、静かに眠る猫たち

    夜の静けさのなか、猫たちの足音が家中を駆け回る。ぴたりと止むと、満足そうに毛づくろいをして、それぞれの場所へ戻っていきます。

    そんな姿を見送りながら、私は小さく明かりを落とします。

    あたりまえにくるように見える明日。約束のようなこの時間。

    それがあることが、楽しみで、しあわせで、たまらないのです。

    ◇ ◇◇ ◇◇


    画像: 運動後は満足し、静かに眠る猫たち

    咲セリ(さき・せり)
    1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。

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