本をこよなく愛する本屋店主5名の、心に響いた一冊をご紹介。店主のまっすぐな言葉で本の魅力をお届けします。紹介してくれるのは、手仕事と本の世界を静かにつなぐロバの本屋店主・いのまたせいこさん。いのまたさんの心に響いた“この一冊”、今回は『火山のふもとで』です。
いのまたさんが選ぶ“この一冊”
『火山のふもとで』
心地よい読書体験が味わえる本を教えてくれた、いのまたさん。今回おすすめしてくれたのは、松家仁之著『火山のふもとで』です。

『火山のふもとで』(松家仁之著 新潮社)
建築が好きなので手にとってみた本。
この物語に出てくる「先生」は建築家・吉村順三がモデルらしいと何かで読んだのだ。吉村順三はとても好きな建築家だ。
主人公の「ぼく」が入所した設計事務所は、夏の間だけ浅間山のふもとの山荘を事務所にして仕事をする慣わしで、その「夏の家」での「先生」と所員たちの仕事と生活の様子がていねいに描かれている。
ちょっとした会話やディテールの細かい描写が建築好きにはたまらない。加えて、密やかに進行してゆく恋、それぞれの人間関係、ストーリーの流れにぐいぐい引き込まれる。
建築好きでなくても読み始めたら一気に読んでしまう極上の小説だと思う。
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天然生活2025年12月号では、「本屋店主の心に響いた、この一冊」を紹介しています。ロバの本屋・いのまたせいこさんをはじめ、魅力的なお店を営む5名に、歩みを照らしてくれた本を教えていただきました。あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。
〈文/いのまたせいこ〉
いのまた・せいこ
東京で8年間「ROBA ROBA cafe」を営んだのち、山口県に移住。2012年、山間の集落にて元牛舎を改装し、カフェ併設の「ロバの本屋」を開店。店内には、紙ものや生活雑貨、毛糸なども選りすぐられ、展示や編み会も定期的に開催。紙の感触や経年変化を大切にしつつ、手仕事と本の世界を静かにつなぐ場を育む。
HP:https://www.roba-books.com/
インスタグラム:@roba_no_honya






