本をこよなく愛する本屋店主5名の、心に響いた一冊をご紹介。店主のまっすぐな言葉で本の魅力をお届けします。紹介してくれるのは、本と静かに向き合える余白の時間を大切にするtwililight店主・熊谷充紘さん。熊谷さんの心に響いた“この一冊”、今回は『作文』です。
熊谷さんが選ぶ“この一冊”
『作文』
読み継がれてほしい本を教えてくれた、熊谷さん。今回おすすめしてくれたのは、小山田浩子著『作文』です。

『作文』(小山田浩子著 U-NEXT Publishing)
フリーランスで編集の仕事などをしていたころ、母に祖父の人生を書き残してほしいと頼まれた。
テープレコーダーを回し、祖父に尋ねる。どこで生まれ、何歳で引っ越して、戦争で呉の海軍に徴兵されて、台湾近くの海で爆撃を受けて戦艦が沈み、もうダメだと思ったこと。
愛媛県松山市から原爆を眺めて、もうダメだと思ったこと。
祖父はそれ以上語らなかったが、もうダメだと思った理由を私は書いた。そのとき、こうやって遥か昔から物語は生まれてきたんだと思った。
第三者に物事を伝えようと思ったとき、物語だから言葉にできることがある。
広島で生まれ育った小山田浩子さんは、小学生の作文の宿題を通して、初めて戦争について書いた。
戦争を直接経験していない私がどのように後世に戦争を受け継いでいけるのか。そう考えている私が作中にいた。
いまここにいる私が戦争とどう関係しているのかが書かれていた。
* * *
天然生活2025年12月号では、「本屋店主の心に響いた、この一冊」を紹介しています。twililight・熊谷充紘さんをはじめ、魅力的なお店を営む5名に、歩みを照らしてくれた本を教えていただきました。あわせてお楽しみいただけましたら幸いです。
〈文/熊谷充紘〉
熊谷充紘(くまがい・みつひろ)
東京・三軒茶屋で本屋・ギャラリー・カフェを併設した「twililight」を営む。2011年3月11日の震災を機に会社員を辞め、編集やイベント企画を経て、2022年3月11日に店舗をオープン。選書・執筆・出版を手がけ、本と静かに向き合える余白の時間を空間に反映する。自社で復刊した「体の贈り物」はこの秋重版に。
HP:https://twililight.com/
インスタグラム:@twililight_






