(『天然生活』2021年9月号掲載)
停電時に薪ストーブが活躍する台所(パレスチナ)

薪ストーブの前で憩う料理好きのお父さんと娘さん。こちらの薪ストーブは二段式で、上の段で食材をグリルしたり、ふたをしてオーブンのように使える
中東のパレスチナは紛争による難民問題を抱える地域ですが、岡根谷さんによると「人が温かく、料理がおいしい土地」とのこと。
「あるお宅の朝ごはんがとても印象的でした。平焼きのパンに自家製のオリーブオイルとザータルというミックスハーブをかけて、さらにこれまた自家製のオリーブ漬けとチーズ、ピクルス、サラダなどが盛られた小皿がたくさん並んでいて。一見素朴ながら豊かさを感じられる食卓でテンションが上がりました」

お父さんが用意したトマト料理のカラヤットバンドゥーラ。薪ストーブで煮ると甘味がぎゅっと凝縮される
しかし、一方で長く続くイスラエルとの対立が台所に影を落とす場面もあります。
イスラエル側による電力供給の停止により、地域によっては1日1回程度停電が発生。それでも住民たちは暗い台所で電気を使う熱源をガスに切り替え、さらに薪ストーブを駆使して食事をつくります。
「パンを焼いたり煮込んだり、冬場になるとストーブ周りがプチ台所のようになっていました。薪の強い火力が料理をおいしくするんです。
さらに、夜にはストーブが家族の照明にもなり、皆が自然と集まりにぎやかな空間になります。ストーブを中心に暖を取りつつ料理をし、暗い環境でも楽しむように家族で笑顔を絶やさないその姿に、逆境でも幸せを生み出すたくましさを感じ、勇気をもらいました」

停電中にストーブでハンバーガーをつくることも
〈撮影/岡根谷実里 取材・文/熊坂麻美〉

岡根谷実里(おかねや・みさと)
1989年生まれ。東京大学で土木工学を学び国際協力を志すなかで「人を笑顔にする料理の力」を知り、現在の道に。世界中の家庭を訪れて一緒に料理をし、そこから見えた暮らしや社会の様子を発信している。全国の小中高校への出張授業も精力的に行う。近著に「世界のお弁当とソトごはん」(三才ブックス)、「世界ひと皿紀行 料理が映す24の物語」(山と溪谷社)など。
※ 記事中の情報は『天然生活』本誌掲載時のものです



