窓際に猫が大集合。その先には……
冬のある朝、ふと庭に目を向けると、木の枝の上で数羽の鳥たちがにぎやかに動き回っていました。
その光景に気づいたのは、もちろん猫たちです。
耳をピンと立て、目を丸くして、しっぽをパタンパタン揺らしながら。まるで「何が起きているの?」と相談しているかのように見つめています。
近づいてよく見ると、それはヒヨドリ。
実は10年以上前、私たち夫婦は近所に落下していたヒヨドリの雛を保護し、巣立ちまで育てたことがありました。もしかすると、目の前で遊ぶのはあの子たちの子孫なのかもしれません。

保護したばかりの頃の「ヒヨ」

成長した「ヒヨ」
庭を小さく駆け回る彼らの姿に冬の光がキラキラと反射して、まるで小さな舞台を見ているようです。
猫たちは、目の前の鳥のひと動きひと動きに夢中です。
一羽が枝から枝へ飛び移ると、まだ若い「サチ」の体もぴょん、と小さく跳ねる。もう一羽が地面でちょん、と歩くと、6歳になる「一」は忍者のように身をひそめ「ウカカカカ」と鳴きます。
時には羽音にびっくりして後ずさりする年長「でかお」の姿に、思わず微笑んでしまったり。
猫たちの熱い視線と、鳥たちの自由な動き。それを静かに見守る私たち夫婦の心も、ふわりと軽くなります。
猫がいるから、日常の小さな景色にこんなにも気づけるのだと改めて思うのです。

ヒヨドリを見つけてルンルンの全と一
猫と暮らす中で人生を楽しむためのヒント
・猫の視線を観察してみる
じっと見つめる先には、小さな自然のドラマが広がっています。スマホを眺めるよりも、きっと感動的で、体にも良い刺激になるでしょう。
・日常の変化を楽しむ
季節を運ぶ風、光の揺れ、落ち葉の舞い。猫と一緒にいると、小さなしあわせを見逃さずにすみます。

目が真剣!
・過去の思い出といまをつなげる
昔お世話をした鳥や、旅立った猫たちの面影を思い出すことで、日常が少し豊かに、少しあたたかくなります。命や記憶はつながっているのですね。
・ゆっくり観察する
猫と一緒に静かに見守る時間は、焦らず「今」を感じる練習になります。過去の失敗を悔やんだり、未来の不安に心をざわつかせるのではなく、「今」に焦点を当てることで、生きることが少しらくになるはず。
・小さな喜びを共有する
猫の驚きや遊び心を一緒に楽しむことで、家族の絆も深まります。会話がなくても、ただ視線を共有できたら、何かが変わるのではと思います。
庭で遊ぶヒヨドリと、じっとそれを見つめる猫たち。
ふとした日常の中で、命のつながりや季節の移ろいに気づく瞬間があります。
冬は寒く、その日その日を生き抜くのもしんどい季節です。
でも、今しか触れ合うことのできない特別なしあわせもあるのだと、「今」をまっすぐに味わう猫たちに教えられる毎日なのです。
皆さんも、どうか良いお年をお迎えください。

電線に集まるヒヨドリたち
◇ ◇◇ ◇◇

咲セリ(さき・せり)
1979年生まれ。大阪在住。家族療法カウンセラー。生きづらさを抱えながら生き、自傷、自殺未遂、依存症、摂食障害、心の病と闘っていたところを、不治の病を抱える猫と出会い、「命は生きているだけで愛おしい」というメッセージを受け取る。以来、NHK福祉番組に出演したり、全国で講演活動をしたり、新聞やNHK福祉サイトでコラムを連載したり、生きづらさと猫のノンフィクションを出版する。主な著書に、『死にたいままで生きています』(ポプラ社)、『それでも人を信じた猫 黒猫みつきの180日」(KADOKAWA)、精神科医・岡田尊司との共著『絆の病──境界性パーソナリティ障害の克服』(ポプラ社)、『「死にたい」の根っこには自己否定感がありました──妻と夫、この世界を生きてゆく』(ミネルヴァ書房、解説・林直樹)、『息を吸うたび、希望を吐くように──猫がつないだ命の物語』(青土社)など多数ある。
ブログ「ちいさなチカラ」







